第3話

学校でいつものように机に突っ伏していると頭の上から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。きな

「篠原君!起きてる?」

顔を上げるとそこには暁月舞さんが目の前に立っていた。

「暁月さん?どうしたの?」 

初めて高校で話しかけられたため少し戸惑いながらも話を聞く。

「この前、篠原君のバイト先行ったよね」

「ああ、この前来たねそれがどうしたの?」

「あのときに買って行ったコーヒーの淹れかたを教えてくれない?」

「コーヒーの淹れかた?」

「そうそう!篠原君が入れるあのお店みたいなコーヒーが飲みたくて」

「なるほど、今教えてもいいけど、何かメモするものある?」

そう聞くと舞さんはごそごそと制服のポケットを探り始めた。

「ごめん、今持ってなくてそれに私なんでかメモとかレシピ見てもうまく作れないんだよね」

「それはどういう?」

聞くと、レシピを見ながら卵焼きを作ってもスクランブルエッグになっちゃったり

肉じゃがを作ってもカレーにしないといけなくなるらしい。

要するに料理は見て学ぶ派らしい。

「なら、よかったらでいいんだけど、お店で淹れるところ見てみる?」

そういうと驚いたように首を振った。

「いいよいいよ!そこまでしてもらわなくても、バイト先に友人がいるのは篠原君もいやでしょ」

「まあ、僕はいいけどいいならいいよ、今度何から何まで書いたメモを渡すから」

「ありがとう!篠原君じゃあ、その日楽しみにしておくね」

そう言って自分の席に小走りで戻っていく舞さんはどこかうれしそうな感じがした。

喜んでもらえるなら僕もやる気が出るな。

そんなことを考えているとまた僕の名前が呼ばれた気がした。

「ねえ、篠原君」

また呼ばれてその方向を見ると暁月千早さんが立っていた。

「今度も暁月さん何の用ですか」

「いや、舞が自分から話しかけに行くのは珍しいから何かあったのかなって」

話しかけてくる目は冷たくこれがみんなの言う氷の目だと感じさせられた。


「あ~暁月舞さんにはコーヒーの淹れ方を聞かれてたんだよ」

「コーヒーの?ああ、この前かって言ったコーヒーね、おいしかったわ」

「それはどうも」

「で、舞は口頭で覚えることができた?」

「いや、今度メモを渡すって言ったけど」

そういうと千早さんは少し頭を抱えてしまった。

「メモをくれるのはありがたいんだけど、あの子レシピを見ても料理や何かをするのが苦手だから」

「暁月さんも言うほどなんだ」

姉にも言われている苦手のレベルとはいったいどれほどのものなのかと気になったが苦手なものは仕方がない。

「じゃあこうしましょ、今度店にいるのはいつですか?」

「バイトは明日だけど」

「その日、少し作業を遠目から見ても?」

「それはいいんだけど暁月舞さんは迷惑になるからいいって言ってたけど」

「なら私が連れて行くから、これならあの子も君の気持ちを考えなくて済むわね」

「じゃあ、明日来れるときで」

「ええ、じゃあまた、あと、暁月って二人を呼ぶときに不便でしょ」

「ええまあ」

「じゃあ、私のことは千早って呼んでください」

そう言って千早さんはすたすたと自分の席に戻っていく。

話しているときいつもと違い、どこか安心したようなあの時二人でいるときのように柔らかかったきがする。

そんなことを考えてもこれ以上仲良くなりたいとか

そんな感情は僕には存在していない。

僕はいつもはバイトに行っている時間に家に帰った。

家に帰ると姉さんが家事をしていた。

「ああ、おかえり」

「ただいま姉さん」

僕はからっていた荷物を部屋に置き、机に勉強道具を広げた。

「海馬、もう勉強始めてるの?偉すぎるでしょ」

「まあ、バイトしてるし時間がないからね」

「まじめだね、でも、頑張りすぎもいけないよ」

そういって僕の前にお菓子などを置いた。

「ありがとう姉さん」

「どういたしまして」

僕はおいてくれたお菓子をほおばるとまたシャーペンを握った。

親がいないぶん時間がある姉さんがこの家を回している、

姉さんにはやっぱり頭が上がらないや。

それから時間が過ぎ、僕は勉強を切り上げ姉さんが作ってくれていた少し遅めの夕食をとった。

「そういえばコーヒーの作り方を教えてほしいって言ってたから作っておくか」

別に日ごろからしているから練習なんて必要ないのだが

自分でコーヒーを淹れていた。

僕はすこし多いと思われるくらいの砂糖をコーヒーに入れた。

友人はめんどくさいと言っていた自分だが明日を少し楽しみにしている自分がいた。




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