君の唄は勝手だ

アオイロノペン

君の唄は勝手だ

君の唄を聞くと

右の頬が重くなるんだ

まるく透けた涙の雫が

とまっているような気がして

錯覚の涙を

わたしは人差し指でぬぐい

錯覚の涙で濡れた

わたしの爪を思う

それは美しく光るだろう

浜辺でひろった桜貝みたいに

君の唄を聞くと

右の頬が重くなるんだ

泣き出す前の空の

最初のひと雫みたいに

君の唄は勝手だ

それを聞くわたしは自由だ

唄う君と

聞くわたしの間には

透明なガラス以上の隔たりがあって

だからわたしは安心して

泣き出す前の空になる

ありがとう

君の唄は勝手だ






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