めぐらない春

押田桧凪

第1話 めぐらない春

萌え袖をしたいがために「制服はブレザーがいい」さわぐJK


「下の名をすきな男子に呼ばれたい」いっしょうあいつをすきでいたい


膝裏をみせて、と言われ拒んだら「意味はないよ」と諭され大人


おみくじを引かない人から春が来る 叶いたくないことだけ叶う


初笑い奪ってくれてありがとうそれまでずっと我慢してたよ


わたしたちずっといのっていたよねとあしたがこないひびをおもった


いっぽずつおさがりください ちゅういするあのひとにもかぞくがいること


年越しでいっしょに跳ぶやつやりたいな、あ、いや、別に……あなたじゃなくても……


「あなたには食べてほしいと思ってます」カマキリのごと告白をする


「これ、積もる雪だ」と笑うきみの声 車の窓に残る程度の


「気ぃする」が「気がする」になる字幕ではうちの方言聞こえへんやろ


団地住み経験したから分かるけど、階段の音で分かる友だち


2の粉を間違え先に入れた時「お前は生きろ」声が聞こえた


あのひとも見てるであろう天気図を横目に傘を掲げる朝だ


ずっと覚えてるよーって言って ずっと覚えてない代わりに


誰ひとり認めなかったその足で前のシートを蹴る読モ


「ブルベだね」イエベのきみに言われた日おそろい拒まれちょっとだけ泣く


隣人のつくるカレーの匂いして、鍋を囲まぬひとを思った


邪魔だから減らすために出す十円のような軽さで別れたかった


もう二度と会わないだろうあのひとを見送るわたしのお辞儀の角度

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