第3話 2つの魂
「ほう、転生ですか」
青い髪の少女が、俺をまじまじと見て呟く。こいつは賢竜シャルパンの人間形態時の姿だ。シャルパンはもう600歳だというのに、やたらと少女に変身したがる。
「確かに、ユークどのの魂の他に、もう一つ魂が宿っていますね。弱々しくて、今にも消え入りそうですが」
シャルパンは一見しただけで魂の状態まで分かるようだった。
「そうか。アルクスとやらはまだ死んだわけではないのか」
「ユークどのが体を鍛えたうえで魂の主導権を返せば、感謝されそうですね」
「そんな慈善事業をするつもりはない。が、結果的にはそうなるだろうな。この体と魔力量じゃ、悪魔を祓うなんて到底無理だからな」
さっきの動きで身体中筋肉痛だし、回復魔法をかけたのに足の治りも遅い。一応足は拾ってくっつけたんだけどな。
「その悪魔とやらに、心当たりはあるんですか?」
「聖典の序盤に登場する、聖使徒ルーライ様が封じたという悪魔であることは確実だ。だが、俺の記憶が正しければ、聖典にかの悪魔についての記述は殆どなかった。手がかりは少ないな」
まして攻略法などは知る由もない。
「ところで、聖都は無事か?」
「はい、無事です。私が見たところ、ウルスラはまだ猿芝居を続けているようです。ユーク様は国賊扱いで、肝心の証人たるカサンドラも昏睡状態。状況はかなり不利です。アルクスの身体が手に入ったのは、むしろ好都合だったかもしれません」
確かに、これほどの弱者に転生したほうが、却って警戒されずに済む。生前の身体のまま生き返っていたら、どんな酷い目に遭っていたか分からない。
「じゃあ最大限にこの身体を利用しないとな。といっても、かなり不遇の人生を送ってきたようだが」
記憶をたどると、アルクスは大商人の家の五男として生まれたようだ。商才もなく、学問も苦手で、妾の子らしい。そんなこんなで実家を追放され、一発逆転を狙って冒険者登録したところ、仲間に見捨てられあの有様だった、ということらしい。
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