エピローグ

 モンスター出現から半月が経過した。


 様々な花が咲き乱れるその庭園。太陽の日差しが眩しいくらいにさしてくるその場所に一人の陰がそこにはいた。その陰はしゃがんだまま咲いている花を丁寧になぞるようにまだいると後ろから声がかけられる。


「琴音さんそろそろお時間です」


 その陰に後ろから声をかける人物がいた。琴音と呼ばれたその陰の人物は小さく「わかった」と返すとその場から立ち上がる。


 夏でありながら服を上から羽織るように着ているその女性は、強い口調とその鋭い視線で他者を圧倒する。そして彼女こそこの組織の長である人物だ。


 琴音はその場から歩き始めると男もその後を追うような形で斜め後ろを歩く。


「そういえば東京の方で動きがあったようです。何でも【エキタフ】となのる組織が着々と拡大していき、今では関東最大の組織となっているようです」


「なるほど、それは興味深いな。その組織を率いている人物はわかってるのか?」


 今まで無表情だった琴音の顔が少し変わる。自分の他にも大きな組織を作り出した人物がいたことに驚きと興味が湧いてきたために琴音の顔に笑みのようなものが張り付く。


「すみません、そこまではまだわかっていません。調べさせますか?」


「頼む。もしかしたら私たちにとって有益な人物となるかもしれないからな」


「わかりました」


「なんだか面白そうな話をしていますね。僕も混ぜてくださいよ」


 二人はその声がした方向に視線を送る。それは通路の隅から聞こえてきて、カツカツと音を立てて近づいてくる。声と喋り方から何となく誰が来たかわかった二人はすぐさま警戒を解く。


「総司郎さんどうしてこんなところに」


「盗み聞きか、よくないぞ全く」


 驚く男に対して雪音はとても冷静だ。総司郎と呼ばれたその少年はさも当たり前かのように琴音の横まで来るとそのまま会話を続ける。


「それで、そこのリーダーは強いんですか?」


「さぁ?強いかどうかわわかりませんがこ短い期間でかなり勢力を拡大しているようです」


「その人ならもしかして僕より強いのかな?」


「総司郎より強い人なんてそうそういないと思うけどな。なんだ、興味があるのか?」


「うん!僕より強い人なら一度戦ってみたいな」


 総司郎は馴れ馴れしいほどに雪音と話を続ける。この場所で琴音に対してこのような口がきけるのは総司郎ただ一人だけだ。それは彼がこの中で一番強いからである。リーダーである雪音よりも強く、二人からすれば総司郎より強い人物など存在するのかという疑問さえある。


 そんな二人を差し置いて総司郎は聞きたいことは聞いたと言わんばかりの態度でそのままそそくさとどこかへ行ってしまった。


「まさか一人で行ったりしないですよね?」


「さあな、あいつはなかなか自由なやつだからな」


◇◆◇◆



 とある山の麓。そこには先ほどまで何もなかったはずなのに大きな建物がポツリと建ってい。太陽が沈み、月の明かりを遮る雲がそのからだをどかした時その古びた館は突如として現れたのだ。


 古びた館の中は明かりになるものなどは一切なく、月明かりのみがその廊下を照らしている。廊下の端には蜘蛛の巣がはっており、長年誰も使っていなかったのか窓には埃が溜まっている。ドアはネジが錆びれているのか動かそうとすると「ギギギギギ」と嫌な音を立てる。


 そして廊下のさらに先、最も奥にあるそのドアは他のドアとは異なりやけに豪華に装飾されているが手入れが行き届いていないがためにドアに埋め込まれた宝石はその輝きを失いつつある。


 豪華なドアとは反面中はとても質素で殺風景だ。物などはあまり置かれてなく、唯一置かれている物と言えば部屋の真ん中に置かれている棺だけだろう。南側の壁には女性の姿を象っているスリガラスになっておりそこからは月明かりが漏れその棺を照らしている。


 その棺は何の音も立てることなく蓋が開く。そして起き上がるようにして白い手が中から現れる。


 朝になればその城の姿はなくなっていた。それを見た者たちはまるで狐に化かされているのではないかと思いそ城があった場所に向かってみると確かに城の姿はなかった。それなのにその場所には抉られたような跡が地面に大きく残っていた。

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