第24話 アリスティア&メルヴィンと追跡開始
私とアリスティアがリリィの部屋で見つけたハンカチを持ち帰って食堂で待っていたベアトリーチェに報告する。
「リリィさんの手掛かりが見つかったんですの?」
ベアトリーチェが驚きの声をあげる。警備の人間も含めて沢山の人間が証拠を探した後で私たちが手掛かりを見つけて来たので驚いたんだろう。
「リリィさんの部屋でこのハンカチを見つけたんです。睡眠の魔法薬の残り香がしました」
私は食堂に行ってベアトリーチェに報告した。アリスティアと一緒に何が起きているかを搔い摘んで話していく。
「睡眠の魔法薬!? 眠らされたリリィさんはどこへ?」
「その後、窓から外に連れ出されて最終的には寮のそばのマンホールから地下道に潜ったようです」
私はそう報告して地下道への入り方を説明する。
「マンホールから地下道に……そんな場所があったのですね」
ベアトリーチェが驚いている。この王国は建国してから200年ほど続いている。
だからベアトリーチェのような比較的高位の貴族の子女でも地下道がどこに繋がっているかなんて把握していないのだろう。私はゲームの知識を持っているからある程度知ってるんだけどね。
「マンホールの中はある種の
私がそう言うとベアトリーチェが難しい顔をする。
「そこを通ってどこに行ったのでしょうか?」
学園と外を繋いでいる通路は多くないが、ゲームでは中盤にそこから侵入者が学内に潜り込み隠し通路が発見されている。
逆に今回はその通路を脱出路にしたってことなんだろうけど……やっぱり犯人は転生者=ベルタってことで間違いないよね。
「確実ではないですが私に心当たりがあります。私とアリスティアで地下道には潜らずに調査してみたいと思います」
アリスティアと顔を見合わせて頷く。彼女の回復魔法があればもしもリリィさんを見つけた時も安心だし。
「ちょっと待ってくれ。女子だけで行くのは不安だから僕も一緒に行こう」
そう言って声を上げてくれたのはメルヴィンだ。確かに彼の魔法なら百人力だ。
「じゃあお願い。私は属性魔法は炎しか使えないし、何かあった時にメルヴィンが一緒なら安心だから」
そう言って頷くと思わぬ評価の高さに驚いたのかメルヴィンが赤くなっている。
「そっ、そうか。僕に任せてくれ」
アリスティアにちょいちょいって制服の袖を引かれる。
「ミーヤって男の子を手玉に取るのが上手すぎない?」
耳元で囁かれるけど逆ハー
三人で学校の正門にやってくる。緊急時なので外出許可は簡単に降りた。
メルヴィンに関しては入学早々の決闘騒ぎのおかげで裏がないことが分かっている。秘密を教えても後で困ることは少ないだろう。
「今から使う魔法については他言無用でお願いね」
メルヴィンにも伝えてから私は変身する。
「じゃあ、いくわよ。私についてきて……『メタモルフォーゼ!』」
そう言って私は変身魔法を発動する。黒猫の私を見て驚くメルヴィン。
「まさか、変身魔法が使えるのか……普通の魔術師には絶対に手が届かない魔法の神髄の一部だぞ」
勉強してるメルヴィンには申し訳ない。何年も勉強しても存在を知るくらいで秘中の秘である変身魔法をグレインの使い魔ってだけで使いこなしちゃうのは本当にズルいよね。
非常事態だから許してにゃ。
「ミーヤの魔法のことはとにかく、今は黒猫になったミーヤを追いかけよう。メルヴィンくん」
「あ、ああ、分かった。しかし……本当に君は何者なんだ……?」
小声でつぶやくメルヴィンの言葉も全て聞き取れてしまうのは猫の聴覚のせいなんだろうな。
私は黒猫の姿のまま学園の門を抜けて大通りを走り裏路地に入り込んでいく。
「ミーヤ、本当にこの道で合っているのか?」
メルヴィンにそう聞かれるけど、私は猫なので答えようがない。返事代わりににゃ~って鳴いておく。
「黒猫の姿で鳴かれてもな……いったい何を追いかけてるんだ……」
メルヴィンはそう呟きながらも私について来てくれる。
「ミーヤが向かってるんだから何か理由があって走ってるんだよ。ミーヤを信じたら間違いないって」
アリスティアがそう言ってくれる。いい相棒だよ。信頼がありがたい。
実際のところ私はベルタの臭いを追っている。
食堂でそれとなくベルタについて質問してみると夕方リリィが行方不明になったと判明した時間帯、ベルタは寮内に居たそうなのだ。
ベルタが出て行ったのはみんなが手分けしてリリィを探しに行った時。
つまりベルタはリリィを誘拐し何食わぬ顔をして一度部屋まで戻り、その後探しに行くふりをしてリリィのところへ向かったんじゃないかと思ったのだ。
もちろん、ベルタがリリィを誰かに引き渡して今は別の場所にいる可能性もある。
それでもベルタを一度捕まえれば多くのことが判明するはずなのだ。
私は走る。ベルタの臭いを探しながら。あたりはすっかり暗くなってしまった。
そして王都の外れ……一軒の廃屋にたどり着くのだった。
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