第16話 決闘申し込みとボッチじゃないお昼ご飯
とぼけているわけじゃないけどメルヴィンに睨まれる理由が全く分からない。
あと同年代の男子に睨まれるとか普通に怖いから。こっちは歴戦の勇者とかじゃなくてただの女子高生だからね。
「ミーヤさん、メルヴィン様は入学試験でのミーヤさんの火球の魔術の精度を実際に見てて気にしてるんだと思う」
アリスティアが小声で教えてくれる。なるほど。それで教室でのあいさつの時も私を見てたんだ。とりあえず正直に話そう。
「私は魔力が小さいので、マジックキャンドルを消すにはするしかないから苦肉の策で……」
「マジックキャンドルの試験を一発合格したのは今年の新入生では二名のみ。僕と君だけだ。そして大火力で標的全てを吹き飛ばした僕に対して君は圧縮した高温の火球でマジックキャンドルの術式を吹き飛ばして見せた。正直驚いたよ。ひょっとしてもっと魔力を隠してるんじゃないかと思ってね。君に興味がある」
あれ? 「君に興味がある」って言葉は探求心が強いメルヴィンがアリスティアに対して一番最初に告げてくるセリフじゃないっけ?
また、アリスティアのフラグが折れてないか?
「それほどでもないけど……」
能ある鷹は爪隠すってわけじゃないけど、確かに私は魔力を10分の1にして隠してる能ある黒猫だ。爪は好きなタイミングで出し入れできるけど。
「……に僕と付き合ってくれないか?」
え!? ひょっとして生まれて初めての告白? 死んじゃった? のがついこの間だから人生17年の猫生1か月だけど。
私の隣のアリスティアが驚いた顔をして赤くなっている。いや、メルヴィンは確かにイケメンだしカッコいいけど私には心に決めた人が……
「ごめんなさい。好みのタイプじゃないんで……」
「ちょっと待て! なんで僕がフラれるような流れになってるんだ! 『明日の放課後に』僕との模擬戦に付き合ってくれないかと言ってるんだ」
ふぇぇ……びっくりした。そうだよね。私なんて男子に相手にされるわけないよね。
グレインだって私が自分の愛猫ミャーコだから可愛がってるだけだろうし。
「も、模擬戦ですか? 魔法で戦うんですよね?」
「そうだ、説明は受けただろう」
と、とにかく模擬戦か……新入生でも放課後に訓練場は使っていいって言われたのは確かにそうだけど。
明日は金曜日。金曜日の夜から土曜日と日曜日は魔塔に帰る予定だから放課後は大丈夫って言えば大丈夫だけど……
「いいですけど、あんまり長くなると困るんで一回だけですよ」
「そうか、一回で十分だ! 一回勝負でどっちが上か決着をつけよう」
メルヴィンの赤い瞳に炎が灯ったみたい。
「わ、私も付き添います」
アリスティアがなぜか小さく手を挙げている。
「「え?」」
私とメルヴィンの声が重なる。
「ミーヤさんに怪我があったら大変です」
いや、そんな心配しなくても……
「分かった。じゃあ明日の夕方は三人で訓練場に集合! いいな!」
メルヴィンが勝手に話を進めるし! でも、まあいいか……アリスティアも一緒だったら少しは安心だし。
こうして私は明日の放課後、生まれて初めての模擬戦、決闘をすることになったのだった。
この時私は気付いていなかった。メルヴィンのことを気にしている何人もの女子の前で決闘宣言をしていたことを。
…
……
………
翌日の目覚めはなかなか快適だった。
久しぶりに一人で寝るベッドは広くてその代わり寂しかったけど……今日を乗り切ればグレインと一緒に寝れると思うとぱっちり目が覚めてやる気十分だ。
猫のやる気を見せてやろう。
入学二日目ということもあってか、昨日よりいくぶんスムーズに授業が進んだ。今日から魔術学科と騎士学科に別れる授業が始まって王子たちと別の教室で授業を受けることになる。
座学の魔法学概論なんかはいきなりグレインから実践的な技術論から学んでしまった私には新鮮だった。
授業の最後に担任のアース魔法学教諭に、魔法訓練所の使い方について質問をして放課後の使用許可を受ける。
「ねえ、ミーヤさん……みんなに聞いてみたけどメルヴィン様は新入生の首席入学者。しかも入学試験での魔力測定では今年の最高値を出したという人です。噂ですが属性魔術を三属性使えるとか。本当に気を付けて下さいね」
クラスのみんなから情報収集してきたアリスティアが私に教えてくれる。
正確には私とメルヴィンの決闘話は今新入生の間で最もホットなニュースで、一番近くにいるアリスティアはみんなから質問攻めにあい、色んな情報を貰って来たらしい。
メルヴィンのスペックや使える魔法はプレイヤーとして操作していた私にはよく分かってる。普通に強敵だよね。
そう言えば『マジ・マリ』だとこの時期、入学二日目のアリスティアって完全に無視られててクラスの中で孤立しちゃって、お昼ご飯の時間に中庭でお弁当でボッチ飯してるところを王子のシルヴァとアルフレッドに見つかるんだけど、そのフラグも折れちゃってないか?
こうして私と一緒にご飯食べてるし、私がアルヴィンと決闘する羽目になっちゃってるしどうしてこうなった!?
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やっぱり小説を読んでもらうって難しいですね。
入学試験のところから話数ごとにPVが一気に減りました。
とりあえず様子を見ながら早期完結に向けて舵を切ろうかと思います。
いつものことですが、ハッピーエンドが大好きなので完結はしっかりさせますね。
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