第14話 いってきますと初めましての挨拶
あと一週間したら学園生活が始まる。
この部屋でグレインと過ごせる日々もあとわずかと思うと感慨深い。
って言っても約一ヵ月過ごしただけなんだけど、こっちの世界に来てからの一ヵ月は濃密だったので特別にそう思うのかも。
今日は入学試験があって疲れたなぁ。
「メタモルフォーゼ」
私は呪文を唱えると猫になってグレインのベッドに向かう。
グレインは
ベッドに飛び乗ってグレインの胸元に入って寝る。いつからか上半身裸じゃなくてナイトガウンを羽織ってくれるようになったのは距離が縮んだのか遠ざかったのか。
そんなことを思いながら私はグレインの胸で眠りにつくのだった。
…
……
………
ついに王立学院の入学式。真新しい制服に身を包み、魔塔から元気に旅立つ。
「何かあったらすぐに『念話』を飛ばして。最初のうちは美弥呼への魔力供給量が一番大きくなるように
過保護なグレイン。でも私としても不安なので助かる。
「グレインさん……」
グレインの部屋のドアの内側でちょいちょいとグレインを手招きする。
目を合わせたら念話が使えるのはお互いに分かっているから内緒話は念話でいいんだけど、こっそり話したいからって風を装って両手を筒の形にして上を見上げて耳打ちをする体勢を作る。
何かを伝えようとしようとしているのだと察してくれてグレインが右耳を寄せてくれる。
えいっ! ちゅっ!
油断しているグレインのほっぺたにキスをする。ほっぺただけど私のファーストキス。昔見たマンガだか小説のキスをマネしちゃった。
「それじゃあ行ってきます」
『グレイン大好き』
口と念話で別々のことを伝えて大急ぎでドアを閉めて外に出る。
右頬を押さえて真っ赤になっているグレインの顔を思い出すと自然と早足になった。
初日の今日は入校式。
王立学院の大講堂に集まり王様とか、騎士団長とか、魔法研究所所長とかのありがたいお言葉を頂いて、その後クラス分けの発表。
偉い人の中でもグレインがひと際カッコよくって輝いて見えた。
クラスはA・B・Cの3クラス。騎士学科も魔術学科も同じクラスで純粋に入学試験の成績で上から三つに分けられている。
授業の難易度別って感じか。そして騎士学科と魔法学科の授業内容が別になった時は、移動教室で別々の部屋で授業を受ける感じ。
ゲームではヒロインや攻略対象が全員同じクラスにいたけどこういう仕組みだった。
もちろん私もアリスティアも同じAクラスだ。
大講堂から教室に移動し、クラスの担任の先生から説明と自己紹介をされる。
「ミーヤ・キャンベルです。よろしくお願いします」
「「「「よろしく」」」」
クラスメイトのみんなも笑顔で迎えてくれる。良かった。
「じゃあ、みんな仲良くしてね」
自分の挨拶が終わり一安心。隣に座ってくれたアリスティアと笑顔を交わす。
このクラスに攻略対象の男子生徒は三人。
それぞれ、シルヴァ・ソリュート。この王国の第三王子。騎士学科の実技試験でトップを取ったクールな男子。髪の毛の色と目の色は青。
「シルヴァ・ソリュートだ。知っての通り第三王子だ。だからと言って私を相手にする時に手を抜くことは許さん。覚えておいてくれ」
アルフレッド・ピッツフィールド。騎士団長の息子で騎士学科の実技試験でシルヴァ王子と最後まで戦い抜いた。茶髪でハシバミ色の目をしたお兄さんタイプ。
「アルフレッド。ああ、家のことは気にしないでアルフレッドって呼んでくれ。
メルヴィン・ハインド。魔法学科の実技試験で一番攻撃力の高い炎の魔法を使った熱血漢。ちょうど私たちが立ち去る時に見た赤毛の受験生が彼で赤髪赤目。彼の生い立ちについてはそのうち語ることもあるのかも。
「メルヴィン・ハインドだ。昨日の実技試験、トップで通過したのは僕だけど、気になっている術師が一人いた。威力が低いのに精度が高い。力技でクリアした自分にはないものをしっかり学べればと思う」
あ、あれ!? なんだかすごくこっちを見ながら言われたんだけど。
この三人とまだ出会っていない上級生の一人でリカルド・ベルモンド、中盤で転校してくる他国の皇太子イザイム・ナバーロの計五人が攻略対象になる。
「アリスティア・ベルです。皆さん知っておられるかもしれませんが、平民の出身になります。至らないこともあるかもしれませんがよろしくお願いします」
アリスティアも昨日私が事情を説明したからか折り目正しく控えめな挨拶。ゲームだと学校内は平等という建前を真に受けて初手から「平民だけど仲良くしてください」の言葉で半ば目を付けられるから……
とりあえずは今のクラスのメンバーとは仲良くしておこう。クラスメイト全員と仲良くなるのが目標だ。
この後授業の進め方や昼食は学食で食べられること、放課後は魔法訓練所が解放され、2学期になるとダンジョンに潜ることができるようになることなどが説明される。
そうして学園生活の初日は無事に終わった。
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