第2話 みゃーこを守って事故に遭う!?
「おばあちゃん、心配しないで。私がみゃーこを絶対見つけてみせるから」
私は高校2年生の
碧野市に住んでいる近所のおばあちゃんの家の黒猫みゃーこが逃げ出して行方不明になったので探す約束をして休みの日にご近所を捜索していた。
「みゃーこ~みゃーこや~い」
「迷い猫探しています」の貼り紙は済ませたので私はみゃーこの大好物の「ちゅーる」を片手に街中をうろつく。
路地裏を見つけては覗き込み、ゴミ箱を見つけてはふたを開けて中を見る。
フニャーーーーッ!!
「あ、みゃーこ!」
猫同士の喧嘩でもしたのかみゃーこが路地裏から飛び出して車道へ!
「ダメッ!」
叫ぶけどみゃーこは止まらない。
パッパッパァァーーーーッ! キィィィィィィッ!
クラクションを鳴らしながら急ブレーキをかけつつ、それでもその赤の乗用車は止まらない。
クラクションで驚いたみゃーこは車の前で立ち止まってしまって引きつったように動けない。
「みゃーこっ!」
ガードレールを飛び越えると私は咄嗟にみゃーこの前に飛び出した。みゃーこを抱きしめるようにしてうずくまる。
ダメだ! 轢かれる!!……私は思わず目をつぶって祈った。
神様……助けて! その時、私の体が光に包まれた。
***
***
運動音痴の私がよくあのガードレールを飛び越えられたな。
って、あれ……? あの後、私はどうなったんだっけ?
私は
ひょっとするとみゃーこが召喚されて、ミャーコになって
一緒に転生に巻き込まれたから「ザ・フライ」みたいに物質転送の最中にみゃーこと美弥呼が混ざっちゃった?
とにかく今の私には人としての意識がある。そう言えばさっきグレインは「使い魔」とか言っていたし。
使い魔の猫は知性があるのかもしれない。
まずはどうにかグレインとコミュニケーションを取って状況を把握してこっちのことを伝えないと。
カリカリを食べ終わった私はキョロキョロと周りを見渡す。
ここは多分魔術師の研究室。
広い部屋の中には所狭しと物が置かれ、書き物ができる机と実験でもしてるのかフラスコやビーカーが並んだ机が置いてある。
壁には乾燥させた草? や多分生き物の干物、棚にはビンに入った変わった色の液体なんかが並んでいる。
嗅覚が鋭敏になっているのかいろいろとキツイ臭いがするものもあるが、この「ミャーコ」の体はこの部屋に慣れているのか不快感はない。
トンッ
グレインの膝から床に降りる。床は石造りなのか若干冷たい。
今の感じからすると運動音痴の私とは思えないくらい、自然に猫の動作ができるみたいだ。
試しに書き物机の上に飛び上がってみる。
トンッ! 軽やかな音がして机に飛び乗ることができた。そのまま机の上を見回す。
机の上には書きかけの書類が置いてあってインク壺に羽ペンが挿してある。
書類を見ると「魔法の素養がある平民の王立学校への入学許可」という文言が見えて、ヒロインのことを思い浮かべる。
「ミャーコ? それは決済のサインをするだけだからイタズラしないでくれよ」
そう言うとグレインが私の脇の下に手を入れて床にそっと下ろす。
って! そこは胸!!!
それから私の頭をなでなでしながら、優しく語りかけてくる。
胸を触られたことがどうでもよくなる。
……最も猫の体で胸を触られること自体がどうでもいいことだけど。
「いいか? さっきの魔術でお前は俺の使い魔として契約された。俺たちの間には
使い魔の契約の魔術? 私の意識が芽生える直前にそんなことがあったのかな?
とにかく、私がただの黒猫ミャーコではなくて庭月野美弥呼であることをグレインに伝えたい。
どうしたら私が人間の魂を持ってるって伝えられるだろう。
そうだ!……美弥呼の十八番、天使の歌声ならグレインも猫には不可能だと分かってくれて中身が人間だって気付いてくれるかも!
私はグレインの椅子のひじ掛けに飛び乗った。そのまま、椅子の背板に飛び乗って渾身の歌唱をする。
私が現実世界で大好きだった『推し』のアニメのオープニングをアイドルになったつもりで全力で歌い切る。
パチパチパチパチ!
「お~! ミャーコ、凄いな! 使い魔になると歌まで歌えるのか? だけどいきなり歌うなんてどうしたんだ?」
突然の歌唱に驚くグレインだけど、猫バカすぎる。
自分のネコがどんな凄いことをしても自分のネコだからって納得しちゃうタイプだ。
顔を見上げながら「
猫だから上手くいっていないのかもしれないけど、とりあえず私の思いを少しでも分かってもらえたら……
「ひょっとして何かを伝えたいのか? 使い魔になると元の動物の知性が底上げされるっていうし……」
そうっ! それ!
流石グレイン。
私のご主人様!! いや、リアルでご主人様とか言ってる女子高生なんてメイド喫茶でバイトしてる女の子くらいだろうけど、今の私は猫だからグレインのことをご主人って呼ぶのはめちゃくちゃしっくりくる。
私はグレインに思いが届くように、机に飛び乗って目の高さをできるだけ合わせて彼の方に向かって訴える。
「ミャーコと会話できれば……そうだ!」
え!? ひょっとして何か方法があるの?
「でも、動物と話せる魔術か……ひょっとしたらあれが……!」
そういうとグレインは山積みになっている本の山を崩しそうな勢いで一冊抜く。だが本の山は崩れなかった。だるま落としの要領?
そのままペラペラと魔導書? のページをめくっていく。
お目当てのページを見つけたのか、そのページを開いたまま口の中でごにょごにょと何かを唱えたかと思うと「ブレインシェア!」と私の方を見て叫んだ。
その瞬間
次の瞬間、私の頭がものすごくクリアになった。なにこれ? 頭がいい人ってこういう感じなの? グレインの頭と繋がった!?
------------------------------------------
というわけで第二話でした。
美弥呼は自分のことをグレインに伝えられるのか?
GW中は2話投稿予定です。次回投稿は明日18時になります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます