第2話 支えるのは野心。必要なのはコネと金
ヴィーダがVHSに勝てなかったように一定の差が産まれた競争過程において勝負が成り立つ機会は稀であり、それはどんな世界であっても変わらない摂理で真理だ。其処に能力や価値は機能しない。先にやるか後追いになるかだけ。これはそのままパイオニアとして生きるしかないという意味だ。
先駆者として。
誰かにとっての指標として。
誰かにとっての目標として。
誰かにとっての規範として。
誰かにとっての模範として。
誰かにとってのオリジナルとして。
世に生を得るしかない。
それが難しいから研究や修練は大切だ。
それが難しいから希望や未来だ。
しかしながら先駆者になったとしても、先に差をつけていた『先代の先駆者』に真似をされてしまった場合は自身の結果や功績にはならないのも世の常。
実績ある方が発言力も違うだろうし。
実績ある方が影響力も違うだろうし。
だから。
製品が市場に並ぶ際は気をつけなくてはならない。
売ってる会社と作ってる会社が同じだとは限らない。
発表した作者と作った製作者が同じだとは限らない。
だからこそ。
一人の画家は決めた。
作品を生かし。
作品を護る為。
全ての製作物を自らの手で盗作させた。
盗作させたというか。
盗作どうですかと営業をした。
私の名前ではなく。
貴方の名前でどうぞと。
但し、代金と人脈は頂きます。
そんな生き方をしていた。
それは何十年もそうだった。
しかし。
ある日。
その画家は言った。
私の作品を盗作した全ての芸術家に告ぐ。
作品には極小のサインが刻まれている。
内なる悲しみも。
内なる怒りも。
内なる創造の神を宿さず。
ただ箔だけ欲した紛い物よ。
恥を知れ。
そして恐怖しろ。
と。
その画家は高層ビルから飛び降り。
自ら命を断った。
そして世界中の高名な画家が。
自分の作品を燃やす事件が起こる。
大衆に媚びを売り。
侘びに遠い紛い物。
その二十年後。
芸術作品に一切の価値が無くなり。
芸術家に一切の信用が無くなり。
芸術学に一切の本質が無くなった世界で。
私達は。
芸術家を目指している。
媚び錆び 居石入魚 @oliishi-ilio
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