第24話 宣戦布告
オレは校舎を走り、下駄箱で瀬流津に追いつく。
「なにか?」
「さっきのは誤解だ。足を滑らせた阿雲姉妹を助けたらたまたまああなっただけで」
「別に、あなたが誰とどういう関係であろうと私には関係ないですからね」
くっそ!
取り付く島もないって感じだな。
こういう状況になっちまったら、遠回しに策を弄しても余計に拗れて手遅れになるだけだな。
「……関係ないか」
「え?」
「瀬流津がオレと距離をとりたいのは理解した。ただ、決着はつけさせてくれ」
「決着?」
「ああ。前に瀬流津から一本取るって宣言しただろ?瀬流津が来なかったここ一週間、オレは練習を欠かさなかった。だから勝負して欲しい」
「……」
「もちろん強制はしない。受けてもいいと思ってくれたら、明日の昼休みが始まってすぐ外の体育館に来てくれ。待ってるから」
「わかった」
瀬流津はそのまま帰宅してしまった。
『今の勢いで告白に踏み切るのかと思ったわよ!』
「それはダメだ」
『なんで?』
「今の瀬流津は拒絶状態に入ってる。
その状況で告白しても間違いなく断られる。例えオレに好意思っていてくれたとしてもな。
そして、一度断られたら次に繋げるのは難しい。オレもアプローチしづらいし、向こうも断った事実を撤回しにくいからな。
だから感情を冷却した上で、オレのこと再度よく考えてもらう」
『なるほどね。でもそれだと明日の昼までは短いんじゃない?もっと悩んでもらった方が、鏡夜のことで頭いっぱいになりそうじゃない?』
「もちろんその可能性はある。だが、逆に考えすぎてオレのことなんてどうでいいという結論になってしまう可能性もあるんだ。
だから短く、そして期限を指定することによって、今この瞬間から明日の昼までオレのことを考えてもらう」
『来なかったらどうするの?』
「瀬流津の性格的にそれはないな。必ず来る。そんで……次で決着させる」
瀬流津と約束を取り付けたオレが会議室に戻ると、体育祭実行委員はすでに撤収を始めていた。
「あっ!湾月くん戻ってきたー!ちょっと初日からいきなりサボるってどういうつもりなのかな~?」
オレに気付いた阿雲姉妹が冗談を言いながら寄ってくる。
「すんません」
「次はなしだからね!それで?麗華ちゃんとはなに話したの?」
「なに話したとは?」
「誤魔化してもダーメ!追いかけたんでしょ?」
まぁ、バレてるわな。
「誤解を解いただけです」
「ふーん。私と誤解されるの嫌なんだー」
私と?
風歌先輩も同じ状況だったのに?
無意識のうちに自分の妹のことを見下してるとか?
「校内でも人気の高いお二人と
「そっか!そっか!そういうことなら許してあげる!」
「ありがとうございます」
からかいに来ただけか。
雷歌先輩は風歌先輩を残して、鼻歌を歌いながら行ってしまった。
「ごめんね?」
「いえ、冗談だってわかってますんで。こちらこそ、もし噂になってしまったらすみません」
「そんな、そんな!それに雷歌ちゃんはまだしも、私とじゃ話題にもならないよ……。てか、私と噂になったら湾月くんの方が迷惑だよね?」
迷惑というか、困るかな。今後の動きに支障きたしそうだし。
まぁ、言わないけど。
つーか、双子なのに容姿以外ほんとに似てないな。ゲームの双子キャラって大体似た性格してるんだけど……。
「そんなことないですよ?風歌先輩と噂が立つなんてむしろ光栄です」
「……」
あれ?無言?
雷歌先輩の参考になるかな~と思ったんだけど、もしかしてオレの演技が大根過ぎたか?
「風歌ー!なにしてんのー!?」
雷歌先輩に呼ばれ、風歌先輩は特に何も言わずに、その場を去ってしまった。
「ただい……ま」
「遅い!何やってたの!?」
帰るとなぜか日菜が家にいた。
「なんで日菜がいるんだ?」
「すぐにわかるわ!それよりも質問に答えてくれる?なんで帰ってくるのが、こんなに遅いの?」
「体育祭準備に駆り出されてまして……」
「体育祭!?鏡夜って体育祭実行委員だったけ?」
「まぁ、そんなことかな」
「ふーん。まぁいいわ。ねぇ鏡夜?張り出されてた順位表、あれどういうこと?」
「!?そ、それは……」
「テスト取ってあるでしょ?持ってきて!」
「はいっ!」
オレは日菜に圧されて、急いで無情な点数が記載されたテストを持ってくる。
危険を察したのか、トーカの奴逃げやがったな!
「リビングでやるのか……」
「なんか言った?」
「いえ、何でもないです」
リビングだとほら、彩夜にオレに情けないテスト結果が見られてるじゃん!!
やめてー!見ないでー!
「うわー。アニキの点ひどいね」
ぐっ。
「アニキこれ卒業できんの?」
ぐふ。
「てか、これ張り出されたとかチョー恥ずかしいじゃん」
ごはぁっ!
心にダメージが……。
「鏡夜、ふざけてないで、正座して!」
「なんか、日菜も母親みたいだな……」
オレは命令に従い、床に正座する。
「も?もってどういうこと?」
「いや~桔梗さんにも勉強しなさい!って怒られたからさ」
「は?桔梗さん?どうして桔梗さんとそんな話するの?」
「勉強見てもらったからな。気になったんじゃないか?」
「勉強を見えてもらった?もしかしてテスト期間中も帰りが遅かったってそういうこと?」
「ん?ああーそうね」
なんで日菜がオレがテスト期間中に帰りが遅かったこと知ってんだよ?
もしかして、また彩夜が話した?
最近、彩夜と日菜って仲いいのか?
「あそう。ふーん。ああそう、それでこの点数?」
「なんだよ?」
「別に?」
「言いたいことあるならはっきり言えよ!言わねーと伝わんねーよ!」
「でしょうね!鏡夜、鈍いもんね!」
「鈍くねーだろ!?」
え?鈍くないよね?
「アニキは鈍いと思う」
彩夜まで!?
オレって鈍いのか……。
「桔梗さんと付き合ってるの?」
「付き合ってないけど」
「じゃあ、好きとか?」
「日菜ちゃん、その聞き方だとアニキたぶん勘違いするよ」
いやいや、彩夜さん。
それは兄ちゃんを甘く見過ぎですからね。
この流れでラブかライクか間違えるわけないじゃないですか!
「恋愛感情として!恋愛感情として好きなの!?」
「別に」
「そ、そう」
なんなのこの質問。
彩夜も日菜も、だろうな!みたいな表情して。
オレに恋愛とかできるわけないとか思ってんの?
今のオレには恋愛ゲームという最強の教科書があるから、その気になれば百戦錬磨だからね?なめんなよ!?
「なんなの?」
「別に!次のテストはわたしが勉強教えるから!わたしが教えれば赤点なんて一つも取らせないし!いい!?」
「お、おう……」
言いたいことを言い終わったのか、日菜は満足そうに帰っていった。
嵐のようだったな。
日菜と入れ替わるようにトーカが戻ってきた。
『英さん機嫌よさそうだったわね!あれならどんな会話してたか聞いとけばよかったわ!』
こいつ、ついにサポートする気もなくなりやがったな。
「そう言えば、彩夜の学校の体育祭っていつだっけ?」
「来週」
「もうすぐじゃん!」
「来ないでね?」
「え!?なんで?」
「だってアニキが来たら面倒なことになりそうだし……」
面倒?
『彼氏とのイチャイチャを兄に邪魔されたくないんじゃない?』
!?
「彼氏ができたのか!?」
「はあ!?」
「彩夜を誘惑するとは、どこの馬の骨か知らんが、いい度胸だな!」
「できてない!できてないよ!」
「あれ?そ、そうなの?じゃ、じゃあ面倒って…どういうこと?」
「な、なんでもいいでしょ!!」
ガーン!
彩夜は兄ちゃんに来てほしくないのか……。
昔はオレが行ったら、嬉しそうにはしゃいで周りにも自慢してくれてたんだけどな……。
しかし、しかし!兄として妹の成長を記録しないわけにはいかない!
とりあえず、弁当と、新しいカメラ、あとアルバムも用意しておこ!
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