テロ研会議中。

桜丸

第1話 テロ研究部、始動。

 十月に差し掛かり、蝉は呻き声を弱め、今は秋の匂いに飲まれている。と、まあなんだか純文学ちっくなことを思考しながら項垂れているここは、もう使われていない旧校舎の二階である。ドア付近に物々しく書かれた「テロ研究部」の張り紙とは対照的に、こぢんまりとした部室には、埃と汗がじんわりと混じった空気が充満している。誰も来ないこの部室が、僕には少し心地よかった。

「失礼しまーす。」

 早速誰か来た。ガラガラと音を立てて足を片っぽ出し、彼は私に言った。

「おはよう!部員一号よ」

 彼は平島聡。この部活の部長で、発起人だ。真面目というかビビりな性格で、やりたいことはあるものの、怒られるのが怖くて先生にはペコペコしている。おしゃれ好きでもあり、校則で罰せられないギリギリのニューバランスを履いている。その魂胆がまずダサい。

「なあところで聞きたいんだけど、それなに?」

「これは先輩が貰ってきてって言った過去のテロの資料です。結構苦労したんですから」

「ああ、そっかそっか!そうそう思い出したわ。まあ一旦それは良いんだけど、ちょっと聞いてほしい話があってさ」

「なるほど。それは歴史部の先輩に白い目で見られながら、頭下げてよ〜〜やくもらえたこの資料よりさぞかし貴重な意見なんでしょうね。」

「悪かったよ。とりあえず話だけ聞いてくれよ。...実はさ、この部活はまだ"第一段階"だったんだよ。」

「はあ、もう聞く気なくなりました。」

僕は立ち上がり、バッグに入れてあった二本の缶ジュースを取り出す。

「あざっす。そんでこっからが大事なとこ!今から俺たちは第二フェーズ”テロの実行”に移るんだよ!」

半分開いた飲み口から数滴、溢れる。

「何言ってんすか。怖いこと言わないでくださいよ。」

「いや本当だ。これが成功すれば、俺たちはこの世界に下剋上できる。」

「そもそも動機は?」

「動機とかないのがテロってやつだろ?」

「そんなことないでしょ。必要ですよ。理由。」

「なんっか、世界征服とか?」

「雑だな〜。かの有名な同時多発テロだって、イスラム原理主義の過激派集団が、ムハンマドによって禁じられてることをしていると解釈したアメリカ軍に怒りを抱いたことが動機だったでしょ?」

「お前テロ詳しいな。」

「あんたが調べさせたんだよ。...はあ、とにかく理由がないと。何をするにしても理由が・・」

「実行に関してはOKなんだな。」

「いやダメはダメですけどそりゃ。もしするならって話です。ってかどうせたらればでしょ?」

 そういうと先輩から大きな喉音がなり、それと同時に床からカランカランと音が鳴った。

「とにかくだね・・・」

「もう飲み干しちゃったんですか!?210円もしたのに、、なんだよ、もっと味わえよ。」

「なんだよその言い方は!飲み方なんか自由だろ!」

「それは値段によります!!200円以上からは・・・・


2話へ続く・・・

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テロ研会議中。 桜丸 @2010514

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