第5幕 帰り道

 お祭りはとても賑やかで、笑顔に満ちていた。満月が真南の空を回る頃、祭りは幕を下ろしていく。多くの人は家へと帰り、祭りの余韻に浸りながら眠りについていった。幸せなひとときを、明日を生きる糧にして。町の光もほとんどが消えた時刻、ルシアとシャルロッテの二人は、西の平原に面した見張り場の見回りをしていた。

「あ、いたいたルシア~ちょっと、舞台をお城に戻すの手伝って~」

 たったっと一人の少女が駆けてきてルシアを呼び止める。リムネッタだった。

「あっ、リムネッタ! ちょっと待って」

 ルシアがシャルロッテに目をやると、シャルロッテはにこりと微笑む。

「こちらは大丈夫なので、お手伝いしてきてください」

「うん、ありがとう、後はよろしくね」

 ルシアはそう言ってリムネッタに合流する。二人で灯りを頼りにしながら中央広場に向かっていた。

「今日はうまくできてよかった」

 リムネッタはホッとしたようにため息をつく。

「またルシアと…みんなと舞台で舞をやりたいな」

「うん、そうだね…とっても楽しかった。またいつか、できる日が来るといいな…」

 みんなが騎士団の少女たちを歓迎してくれていた。ルシアとリムネッタは、今日の出来事を胸に刻みつつ、二人で寄り添いながら歩く。二人は少しだけの間、お祭りの余韻に浸りながら歩き続けた。

「これからどんなに大変なことがあっても…きっとわたしたちは、乗り越えられるよ」

 しばらくして、ルシアがぽつりとつぶやく。

「だから…一緒に、頑張ろう、リムネッタ…」

「うん」

 リムネッタはそれだけ言うと、ルシアの手をぎゅっと握ったのだった。


 中央広場に向かう道の途中、ルシアは北の森に面した町の辺りがやけに明るいことに気づいた。

「あれは…火事!?」

 それは家々を焼きつくす炎による明かりだった。同時に、敵襲を知らせる鐘の音が町中に鳴り響く。

「ルシア…これって…」

 リムネッタの表情が一瞬で強張る。町全体がにわかに騒がしくなったのが分かった。

「まさか…そんな…!」

 ルシアが言葉に詰まる。

「と、とにかく一旦広場に急ごう!」

 ルシアはリムネッタの手を引いて中央広場へと急いだのだった。

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