第5幕 シャルロッテ
「あらシャルロッテ。どこに行っていたの?」
剣舞の輪から外れ、休憩所で休んでいた少女は尋ねた。
「少し、夜風に当たって参りました。ヘンリエッタお姉様もお休み中なのですね」
ルシアが見かけた娘───シャルロッテと呼ばれた少女は無表情を崩さずに答える。
「ええ。今はアニエスたちがメインで頑張ってくれてるわ。それより、今日は何かいいことでもあったのかしら?」
ヘンリエッタは無表情の裏に隠された感情を読み取って尋ねる。
「お姉様には黙っていてもお見通しなのですね」
無表情だったシャルロッテの顔が少しほころぶ。ヘンリエッタの顔にも自然と笑みが浮かんだ。
「もちろん、姉妹だもの」
「今日は、とても綺麗な月と出会えました…」
「そうだったのね」
ヘンリエッタはそれ以上、尋ねることはなく、ただにっこりと笑うだけだった。
「それでは失礼します、お姉様」
シャルロッテはそう言って、すたすたとそのまま奥の部屋へと消えていった。
「綺麗な月に…出会えた、ね…。さて、私もそろそろ戻ろうかしら」
ヘンリエッタは立ち上がると、休憩所を後にしたのだった。
風のない窓際、先程奥へ入ったシャルロッテが窓の外を見上げていた。
「……」
少女はじっと黙って、軽く目を閉じる。シャルロッテも、姉であるヘンリエッタを慕い、騎士に憧れる一人だった。
「おやすみなさい…」
少女はそう言って横になると、そのまま深い眠りに落ちていったのだった。
こうして、少女達は騎士への道を歩んでいく。
過去の思い出から、未来の物語へ。
ここから始まるのは、一つの戦争の記録。
そして、ルシアとリムネッタ───夢見る二人の少女が紡ぐ物語。
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