「6月10日 水曜日」


今日から初めて夢日記というものをつけてみようかと思います。私は趣味で書き物をしているしがない一般人で、創作ネタにでも使えれば、もしくは誰かのアイデアの助けになればと思い、あくまで記録の目的で残していくつもりです。寝起きでばばっと書いたメモに手を加えながら、個人的な注釈を添えていこうかなと。


赤い服の女が来る。隠れて、息を殺して、決まった呪文を唱えないと殺される。何回でも殺される。

(何かのホラー映画の影響でしょうか?最近あまり映画を見る機会ってないんだけどなあ。)


日本は戦争と銘打った他国からの集中攻撃の真っ只中で、外には逃げる場所も無いから私はいつも、一緒に居てくれる誰かとクローゼットに隠れていた。

(はっきりとは覚えていないんですが、少しだけ歳上の男の子だった気がします。)


家には大きい毒々しい色の蜘蛛がいた。子持ちかと思ったのでいなくなった時はちょっと気持ち悪かった。

(これ、小学生の頃住んでいた家そのままでした!思えば隠れていたクローゼットやそれがあった部屋も当時の家に似ていたような…)


世間では女の子が自分の体を切り売りして生き延びようとしてる。笑いながら船から飛び降りて死んでいく。私は殺されても死ねない。

(個人的にはこの部分が赤い女よりずっと悪夢に感じました…妙に女の子達の諦め混じりのような吹っ切れたような笑顔に現実味を感じて。)


赤い女が死んでもずっと付きまとってくる。赤い女はいつも遠くから近づいてきて、いつ来るかわからない。逃げ続けることもできるけど一旦隠れてまかないと消えてくれない。

(これ、なんだかホラーゲームみたいですよね。自分は死ねないって書いたんですけど、実際には死んだ瞬間に場面が元の部屋に戻るみたいな、ループ?的なイメージでした。)


外で女が来てしまって、いつも一緒に居てくれる人は必死に私を連れて逃げてくれて、知らないボロアパートの押し入れに飛び込むけど襖が片方外れていて、私のことを隠そうとしたけど大きな包丁が振り下ろされた。

(赤黒い血が飛び散ったのを覚えています。とても痛かった。手が震える。)


そうしたら次に私は双子の女の子の片割れだった。2人で隠れる、クローゼットに。何故かそうすればいいことを知っていた。私達によく似た怪物が来る。呪文を唱えて追い返す。外は相変わらず燃えていて真っ赤。それでも私たちは外に出なくちゃいけなかった。

(ここで突然登場人物が変わるんですよね。私は夢の中で死んでしまったんでしょうか?普段、世界が滅亡する夢をよく見るんですがこれも世紀末という点では似たり寄ったりかも。)



寝起きですぐにメモ取ったんですけど、やっぱり細かい部分は曖昧ですね。一体、双子はこの後どうなったんでしょうか?今日、もしかしたら夢の続きが見れるかもしれませんね。


それでは、今夜もおやすみなさい。

皆さんも良い夢を。



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10分弱程の時間をかけて書き上げた記事を読み返して、投稿する。気まぐれに始めた個人ブログの、記念すべき初投稿だ。ページ更新の後、ホーム画面に確かにそれが表示されていることを確認した私は深く息を吐く。それから大きく伸びを一つすると、自然と連なるようにしてあくびが零れ落ちた。


「我ながらいい歳して厨二臭いよなぁ、こういうの。」


冷めた表情、どこか演技がかった声と言葉。自分の書いた文章をけなしたって気分が悪くなるだけなのに、卑屈な言動はもはや体に染み付いた癖のようになってしまっていた。

身内の中だけで褒められ持て囃され、自尊心だけぶくぶくと太ってしまったやる気も根気もないクズ人間。いくつもブックマークした小説投稿サイトには、未完の駄作が山ほど眠っている。


「……寝る、かあ。」


きっとこのブログもまた、3日と経たずゴミ山の一部になるのだろう。二度目に吐いた息は、不甲斐ない自分に対する溜息だった。

パソコンの電源を落として、気だるい身体をどうにか動かしベッドへと倒れ込む。年中変わらないくしゃくしゃのままの冬布団を頭まで被って目を閉じると、じんわりと汗が滲んでくる。まるで巨大な生き物の口の中にいるような気分だった。ああ、このままもう二度と目覚めなければ。淡い期待を胸に、いつの間にか意識は深い眠りの底へと落ちていく。

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トロイメライの行進 @yurikago_

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