第2話 ガキはご遠慮
事務所の真ん中にかけられた時計が鳴り終わる前に、遠藤が言葉を発した。
「お、昼休みじゃん。織田サン、お昼買ってきていーっすか?」
「ああ。12時45迄に戻ってこいよ。」
「あざーっす!」
遠藤はひょいとバックを手に取り、外へ出て行った。
朝からの3時間、遠藤は終始こんな感じで話していたので、普段は絶対に敬語を崩さないはずの俺が、男友達と話すみたいに自然に話せるようになってしまった。
まあ、言い換えると遠藤が全くタイプではないからだとも言えるが、それはそれでいい。
仮にタイプの女性が入社してしまったりすれば、俺は緊張してしまって仕事が手につかないだろう。
母さんに作ってもらったおにぎりを頬張りながら時刻表を眺めた。
0627
0749
レ
レ
0835
0852
レ
頭の中で列車が走り出し、おにぎりの味を一層美味しく感じさせる。
今回の目的地である京都鉄道博物館の目玉はなんといっても国の重要文化財である扇形車庫。その車庫から出てくるSLが『
そして轟音とともに走る本物の蒸気機関車「SLスチーム号」に、短距離ではあるが乗車が可能だ。
ビデオとカメラも持っていかなくては。
パンフレットを眺めながら色々と計画を練っていると遠藤が戻ってきた。
「ねー織田サン、どうせ社長もいないんだし、明日うちの子ここに連れてきていい??GWは保育料高いんだよね。」
「いやいや、ありえねーから。子ども見ながら仕事できるかよ。無理無理。てかお前、子どもいたのかよ。」
俺は子どもが大の苦手だ。というか、それ以前にそもそも人付き合いが苦手だ。うるさいガキんちょなんて職場に連れてこられたらたまったもんじゃない。
「明日1日ぐらいいーじゃん。社長もいないんだし。明後日からは連れて来ないんだし。てかさ、それ何??」
遠藤が俺のパンフレットに目を向けている。
「あ?これ?鉄道博物館のパンフレット。明後日から京都いくから」
「え、
遠藤の返しに俺は驚いて思わずパンフレットを落とした。【目が丸くなる】とはまさに今の俺のような状態だろう。
鉄道の話が通じた。
おまけに略語や地名が出た。
「え…うそ、お前もしかして鉄オタなの!?乗り鉄!?撮り鉄!?」
思わず身を乗り出して問いかける。
「いや、別に。うちの子が鉄道大好きで、一日中新幹線とか鉄道の話聞かされてるからさ。」
俺は迷わず遠藤に告げた。
「遠藤、明日、会社に子ども連れてきていいぞ。」
「マジか!やったー!助かるぅ!!」
遠藤は満面の笑みで喜んだ。
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