ぼくはえらくなった
ピチャ
ぼくはえらくなった
僕は、家族で一番偉くなった。
みんな僕を見ている。僕が成功すると褒めてくれる。僕が失敗したら笑ってくれる。
僕の欲しいものは、全部買ってくれる。
僕の考えたことを、みんな真剣に聞く。
僕は一番偉いんだ。
僕は、学校で一番偉くなった。
生徒代表になった。
僕は模範的な生徒で、常に正解であり、新しいことも発明する天才だ。
コンクールでは最優秀賞に選ばれた。段の上にはマイクが用意されていた。僕の身長にぴったり合う。
僕は、会社で一番偉くなった。
小さな会社だけど、コツコツ努力し、ついに社長を任された。
僕の指示で部下が動く。部下は僕に承認をもらいに来る。
僕がそう指示したからだ。
ある日僕は失敗した。
部下に怪我をさせてしまった。
僕には重大な責任がある。僕のせいだ。
対応は済ませたが、僕の気は晴れない。
こういうときどうしていたっけ。そうだ、みんな笑ってくれていた。
笑わない。
誰も笑わなかった。
僕は常に成長しているが、失敗を笑ってくれたあの日よりは偉くない。
なぜだ。僕はどうしてこうなったんだ。
僕はどこで間違えたんだ。
僕のせいだ。僕のせい。
あの日に戻っても、きっと解決策は出ない。
気分転換に来た公園で、幼い子どもが遊んでいる。
この子たちはあの日の僕だろうか。
僕はこの子たちの未来なのだろうか。
問いかけはしないが、この子たちは笑っている。
ただ笑っているんだ。
解決策は浮かばないけど、決めた。
僕はこのまま歩いていく。
間違えるし、非難されることもあるだろうし、自分が許せなくなるだろうけど。
それでも前に進む。
偉い人は、ここに置いていこう。
笑う子どもたちに、笑い返した。
ぼくはえらくなった ピチャ @yuhanagiya
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