第18話 亀山結衣菜との撮影 2

 スタッフたちへ挨拶を行い、本収録で監督を務める野村真知子のむらまちこさんへ挨拶をする。


「「おはようございます」」

「おはよう、青葉くん、結衣菜ちゃん」


 優しそうな笑みを浮かべながら挨拶を返してくれる。


 野村真知子。

 60歳代の女性でこの番組含め、沢山の作品で監督を務める大ベテランだ。


「青葉くんのことは明美から聞いてるよ」


 明美とは俺が所属している事務所の社長である東條明美社長のことで、社長と野村監督は知り合いらしい。

 そのため、女性に襲われるような環境を作らないと信頼しており、東條社長が仕事を引き受けた。


「明美ちゃんから聞いてたけど、青葉くんは本当にカッコいいね。想像以上だよ」

「あ、ありがとうございます」


 容姿を褒められて嫌な気持ちにはならないので、照れながらも返答する。


「この番組の趣旨は理解しているね?」

「はい。今回は『雪だるま』という店に向かえばいいんですよね?」

「うん。スマホを使わず、地域の方たちから情報を集めてね」


 そう言って今回の収録内容と収録時の注意点を告げる。


「青葉くんのことは結衣菜ちゃんが守ってくれるので、雪菜さんと鮫島さんは離れた位置で待機をお願いね」

「青葉さんの身は私が必ず守りますので。亀山家の名にかけて」


 真剣な表情で言う亀山さん。

 そんな亀山さんへ俺は伝えるべきことがある。


「亀山さん」

「……?どうしましたか?」

「俺は自分自身の身に何が起こっても絶対に亀山さんのせいにはしません。なので常に気を張る必要はありませんよ」


 『俺の身を亀山さんが守る』といった話になってから、亀山さんの表情が固くなっているため、リラックスするよう伝える。


「お気持ちは嬉しいのですが、そういうわけにはいきません。亀山家に泥を塗るわけにはいきませんから」


 俺たちと出会った頃とは雰囲気が変わり、今の亀山さんは絶対に負けられない戦いに挑む戦士のようだ。


(これは何を言ってもダメみたいだな)


 そう思い、俺はその気持ちを尊重することにする。


「分かりました。俺の身に何か起こりそうな時はお願いします。男が女性に守られるのは情けない話ですが」

「………情けないですか?」


 俺の言葉に“コテっ”と首を傾げる。


「はい。俺は男性が女性を守り、養うべきと思ってますから」


 本心で思っていることを伝える。

 その言葉を聞き、“ポカーンっ”となる亀山さん。


「へぇ。そんなことを言う男の子がいるなんてね。長生きしてみるものだね」


 俺の言葉を聞いた野村監督が笑みを浮かべながら言う。


「その気持ち、忘れないようにしてね」

「もちろんです」


 俺は真剣な表情で言う。


「……変わった方ですね、青葉さんは」

「そうですね。私も驚かされてばかりでした」

「これがお兄ちゃんなんです!」


 そんなことを3人が話していた。




〜亀山結衣菜視点〜


 野村監督からの説明を終え、撮影まで空き時間が発生する。

 その時間を利用し、雪菜さんと楽しそうに話す青葉さんを見張りながら優香さんに話しかける。


「青葉さんのボディーガードはどうですか?」

「そうですね。とても大変です」

「え、大変なの?」

「もちろんです」


 その表情は真剣そのもので、冗談で言っているようには見えなかった。


「青葉さん、とても護衛しやすそうだけど……」

「そうですね。人間性は素晴らしいと思います」

「おぉ、優香さんにそこまで言われるなんて」


 私以上に様々な男性を護衛してきた優香さんが素晴らしいというので、とても素晴らしい男性なのだろう。


「無愛想な私にも優しく接してくださいますので」

「無愛想なのは優香さん自身に問題があると思います。スタイルも良くて美人なのに」

「そんなことありません。スタイルとルックス、両方とも結衣菜さんの方が上です」


(そんなことないのになぁ)


 とは思いつつも昔から笑顔の少ない子だったので、この話題は広げず話を戻す。


「なら護衛はしやすいと思いますよ?」

「確かにコミュニケーションが取りやすいだけで護衛のしやすさは格段に上がります」


 私も昔は男性のボディーガードをしていたため、その言葉には激しく同意できる。


「ですが、女性が恐くない事によって予測不能な事態が起こります。事実、私は一度青葉様に護衛失格と言われてもいいくらいの失態を犯しましたから」

「えっ!何があったの!?」


 私は今回の護衛を何が何でも成功しなければならないため、優香ちゃんの言葉に耳を傾ける。


 どうやら女性スタッフが転倒した時に運んでいた紙をばら撒いてしまう出来事があったらしく、その時、青葉さんが率先して紙を拾った。

 そして拾い終わった後、女性スタッフへ紙を手渡した時に女性スタッフが青葉さんに倒れてきたらしい。


 これは護衛として失格の烙印を押され、鮫島家から罰が下されてもおかしくない案件だ。

 しかし青葉さんは鮫島さんに怒ったり、鮫島家に連絡することはなかった。


「なので、よほどの失敗がない限りは大丈夫だと思います。青葉様も仰ったように肩の力を抜いてください」

「そ、そうですね。ありがとうございます」


 優香さんの話を聞いて少し肩の力が抜ける。


(でも今回の護衛は本気で臨まないと。以前、護衛に失敗して亀山家の顔に泥を塗ってしまったからね。絶対、失敗するわけにはいかないよ)


 そんなことを思いつつ私は頬を軽く叩いた。

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