第10話  封印されてんのに何故か動く右腕


「いや、待てよ!」


 俺はハトノショの背後から、パソコンを操作。


「消せば良いんだよ消せば!」


 俺は『BACK SPACE』ボタンで文章そのものを消そうとした。

 が、何度ボタンを押しても文章が消えない。


(え、ええええええええええええええええええ?)


 け、消せない、消せないいいいいいいいいいいい。

 なんか謎の力が作動して消えないんだけど。


「やっぱり消えないですよね……」


 ハトノショがポツリと言った。


「どうやら私には、一度書いた文章は消せないという能力があるようです」


 なにその余計な能力?


「くそ、しょうがない……。じゃあこっから改変するしかねーな……」


 ……んーと……えーと……。

 …………よし、これで行くか。


山田やまだマモルは酸素を吸った。山田マモルは知る由もないだろう。その時に吸った酸素の中に【いたやまい】が混入していて、遠くない未来に自分が転生してしまう……なんてことはなかった。それは山田マモルの妄想だった。そう、山田マモルはヤベー奴だからそういう妄想をしてしまうのだ』


 かなりヤベー奴になったけど、まあ良いだろ。転生しないよりマシだ。


「凄い! これで回避できますね!」


「……ひとまずな……」


 問題はハトノショだ。


「続きを書くなって言いたいところだけど、無理なんだっけ?」


「あ、はい。封印されし右腕が勝手に動いて書いちゃうんです」


 なんで封印されてんのに動いてんのか分かんねーけどまあ良いだろう。


一旦いったん落ち着こうぜ。その間に転生しないような方法考えるとかさ」


「そうですね。他のことに集中してたら書くようなことないんですけど、どうしても小説のことを考えちゃって」


 アッと、ハトノショは声を出した。


「あの、一緒にゲームしません?」


「ゲーム?」


「はい! ちょっと前に買ったRPGがあるんですけど、それ友達と協力しなきゃ進められないゲームでして……。そのこと知らずに買っちゃったんですよ」


「……そんな悠長なことしてる場合か?」


「ゲームすれば小説の続きを書くスパンが短くな……ううううう!」


 突然、ハトノショは右腕を掴んで苦しみだした。


「ど、どうしたんだ?」


「私の右腕が、右腕がうずいて続きを書こうとしてるううううううう!」


 右腕全然封印されてねーじゃねえか。動く気マンマンかて。


「分かった分かった! 早くゲームやるぞ!」


「は、はい!」


 ハトノショはゲーム機に乗った埃を払ってから、電源を入れた。そして間もなく、テレビにゲームのタイトルが映し出される。


【ゴッドはこのワタシよ♪  ~キミが絶対に転生するRPG~】


 サブタイトルに不穏な空気漂ってるのは気のせい? 大丈夫だよねこれ?


「……おい、このゲーム……。プレイ中に爆発とかしねーよな?」


「ははっ、まっさかー。山田マモルさん面白いですね。そんなことあるワケないじゃないですかー」


 あるワケあったから俺が転生し続けてるのもしかして忘れてるこの人?


「大丈夫ですよ。さあ始めましょう」


「あ、ああ……」


 俺たちはゲームを開始した。

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