麻酔

シンチン

麻酔

子供は走った。樺色の天幕が沈んだ。ああ、サーカスは中止だ!かぶせられたから。腰の柔軟な女が爆笑して体をよじった。子供の口の中、甘い四角が張れ、規則のささやきは閉じ込められた。枠を失った画面、絶え間なく舞い降り続いた。一層鳴るホルン。向こうは屈んでいる人々の丘だ。子供は走った。無限に出口は再現される。さあ、横になってしまうのだ。上下の間に。手足は柱である。末端が丸く縮まった、ずっと空に足蹴をした、透明な膜に赤い血が押し寄せ、波打つの塊だった。穴を作れ、獣!爪で千切るんだ。鳥籠の中で鳥の頭を噛んでいた老人が鳥の頭をはきだした。真っ白な鳥の頭。くちばしを舐めた。正面に名前をつくのはルール違反だ。腰の柔軟な女が爆笑して体をよじった。もう足のないあの子が走った。誰もボールを渡さなかったので、他人の過ちだけを望むしかなかった。贅沢なものを食べたのは大きな間違いだった。それに気づいたところで何も顧みることができない。流れが端緒を覆してしまったから。動ける内側はあまりにも暑かった。これは嫌だ、サーカスは死んじゃった、なのに。

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麻酔 シンチン @sinezin

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