第13話 離反者
離反者
「バカはお前らだろ?この娘の名前が売れるのが迷惑だと言わんばかりの動き、さてはコイツを恐れているヤツが居るんじゃないのか?」
ラールッドのその台詞に答える様に、奥の扉が大きな軋む音を立てながら開く。その時風が吹き込んで少しばかり粉塵が舞った。
あー、あの顔は……
「よう、久しぶりだな。相変わらずケチな商売してんじゃねぇか」
奥から現れた男が俺の台詞に僅かに眉を顰める。アイツはイライラした様子でトントンと靴を鳴らす。右手に持ったナイフを遊ばせながらこちらに振り向いた顔は俺の知るアイツの顔からずいぶんと変わってしまっていた。
「やあ、マッカンさん。アンタこっちに戻って来ないか?ケチな商売してるのはアンタじゃないか」
ハッ!何を言うかと思えばそんな事か。
「小娘1人追い回すようなチンケな商売よりかは百倍マシだね。バカな事してねぇで真っ当にダンジョンでモンスターしばいてろよ」
隣ではラールッドがこちらを見て目を見開く。そんな驚く事は無いだろ。マジなセリフに照れてんのかね?
「サブ、お前も蛮の所なんて抜けちまえよ。こんな事したかねぇだろ」
俺の台詞が終わるやナイフが飛んで来るが上手く手甲で弾く。
「まあ、ハイわかりました、とはならねぇか。何故ウメコ船長を狙った?いや狙いはエビタイ号か?それとも俺か?」
「逃げたアンタには関係無い事だ!」
「貴様ッ!」
黙って聞いていたラールッドだったがついに銃をサブに向ける。だが俺はその銃口を遮る様に立つと俺は指二本を立ててクイクイと挑発した。
「関係無い?連れない事言うなよ。タイミング的にも海賊を使って娘を攫おうとしてたのを邪魔されたって所か?それとも実行犯をシバいた人間への報復か?ああいや、推理ドラマの見すぎだなこりゃ。」
「俺としても、正直に言えばさ。出来ればアンタにはお引き取り願いたいんですよ。」
サブは手の中のナイフを遊ばせながら油断無くこちらを見ている。うぅむ、もう突破するか?
俺がどうしようかと迷っているとウメコ船長が問いかける。
「私を狙う様に悪い人に頼まれたんですよね?前から何か狙われてる感じがしてたけど、最近は特に嫌な感じがするんです!お父さん関係なんですか?!だったら12年前のアレ関係なの?!」
「しゃべるな!女ァ!」
サブが激昂した瞬間にラールッドが抜き撃ちでサブを撃つ。しかしサブはそれに射抜かれながらもウメコに飛びかかろうとする。
「おい、サブ。俺と遊ぶんじゃなかったのかよ!」
サブを切り裂く。しかし、刃が上着で止まる。奴が上着を脱ぎ捨てると、傷ついたのは中の防刃ベストだけだった。表面で止まっていたラールッドの弾丸もその時にポロリと落ちた。
「何故だ。あのマッカンさんは昔はこんな真正面からみたいなやり方はしなかったハズだ。この女が、あの男がこの人をこんな風にしたのか!おのれいまいましい堂吉の娘が………」
うわっなんかブツブツ言ってる。正直に言えばシリアスなのは嫌いなんだよなぁ。もっと肩の力を抜いて欲しいんだが。はぁアニメ見たい
「過去がどうだったとか因縁がどうとかもう正直どうでも良いんだよ。配信始めたのは金が無いのと舞が1人でやれそうなのを確認したからだし。まあ、タイミングが重なったんだよね」
「黙れぇぇ!!」
ナイフの嵐が俺に降りかかる。愛用の刀と前腕に巻き付けた篭手でそれをひたすらに捌く。コイツ昔より強くなってんなぁホント蛮の所なんてやめりゃあ良いのに。
「またその顔だ!俺は任務をこなす為にどうすれば良いか常に考えてるのに、アンタは何処か面倒臭そうにして!心の中では別の事を考えてるんだろ!」
だんだんナイフの流れが早くなりナイフとサブの身体そのものも熱くなって来た。懐かしいなぁ。バーニングサブ。ダンジョンで発現した力で加速する程燃え上がるっていう
「まぁ正直に言えばお前と切り合うより、帰ってアニメ見たいなぁとか思ってるよ。コレはお前を甘く見てるんじゃなくて“そもそもこういうゴタゴタした事”をやりたくないからだが」
「それがっ!ナメてるって言うんだよっ!」
ついにナイフが赤く光り初め、さらに動きが激しさを増す。コートや篭手ももう傷だらけだな。
少し焦げ臭い匂いがするとサブの着ている防弾ベスト、その銃で撃たれた辺りから煙が出て来ていた。
「そのベストがヒートシンクになってんのか。だがこのままアツくなるとお前また昔みたいにひっくり返るんじゃないか?」
俺は刀と小手でナイフをさばくのがしんどくなったからフェイント気味にラールッドが撃った辺りを蹴りを放つ。
ばちゅん!と音がして謎の液体がボタボタとベストからこぼれ始めた。
「クソッッッッッッ!」
サブは俺から離れると、窓から夜の闇に消えて行った。
─────────
とりあえずチンピラがウメコちゃんを狙う事態はおさまった。だが今後また狙われないと限らないしどうしたモンかなぁ………
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