推しを守りたいだけなのに、姉に勘違いされてます!
金伊幡楽
起話 本当に生意気なやつは生意気さをクチで説明したりはしないからなクチで説明するくらいなら僕は牙をむくだろうな僕は魔法科目で100とか普通に出すし
推しを守りたいだけなのに、姉に勘違いされてます!
== 起章 ==
背は私とおなじ位。執事だから当たり前ですが、ぱりっとした
何事も卒なくこなし、剣の腕は
いえ、それも瑕疵と言い切るのはあやしい。容姿に至っては、私は暑苦しい男よりもさっぱりした方の方が好きですからね。
こほん。兎も角、魔法を属性に変換する
彼が貴族という立場を望んでいないのもあるが、私たちはまだ13歳。これから始まる学園で優秀な成績を修めれば、あらたな
あまりにも出来すぎた執事だ。
でも、私に優しくしない。
私を
「私に優しくしなさい、ヴィーシュ」
ふと、思いついた自分勝手な言葉を、ティーカップで口を湿らせながら、私は言った。
可愛げのない執事は嘆息して、「また随分と唐突に…」と胡乱げな眼差しで私を見据えながら口の中でつぶやくと、こう口を尖らせた。
「如何なる時でもお嬢様を優先する
この執事は、こういう風に、野暮ったい言い回しで煙に巻くのが得意だ。しかも、
ふつう、私たちぐらいの
私は苦虫を噛み潰したような顔だったのでしょう。自分でもわかるぐらい渋面を貼り付けて、彼に視線を向けて指摘する。
「私に対する、
「温室育ちの
つっけんどんな私の言い種を、彼はにこりと笑いながら辛辣に
誰が温室育ちですか!彼の物言いに私は怒りを覚えた。
「いいえ、不十分です!そういう、持って回ったいいまわしが気に食わないのです!」
「左様ですか。これもまた、お嬢様に対する
「そういう、複雑な慈愛は認めないんです!」
ふつーの愛をおよこしなさい!と、眼差しに意思を込めますが、執事はそれを嘲笑うかのように無視します。
「私めのような凡夫は情操に乏しいので、難しいですねえ」
嘘おっしゃい!学園に通う為の勉学を共に学んできたし、その過程には貴族の情操教育もふくまれておりましたことを、私は忘れおりませんことよ!?
ヴィーシュは悔やむように
きーっと私は喉を鳴らすと、彼を睨みつける。
「私の執事であることが不満ですの!?」
「いえいえ、執事である事に誇りを持っていますとも。過分な配慮、ありがたく存じます」
わかりますわ、あれは
とぼけおってからに!
地団駄を踏みたい衝動に駆られますが、淑女たるものそんな
──わかりましたわ。落ち着きましょう。私は落ち着きます。
結局、いつものように私がヒートアップして言い募っても、随分と滑らかな舌でのらりくらりと避けられ続けました。彼は会話の主導権を譲らず。最終的に、私はこの執事の口先に丸め込まれました。
この執事を上回ることができない自分の不器量さに嫌悪が差す。
──まったく、本当に無礼な人だこと!
胸中でそう悪罵をつくが、もっと深い
ヴィーシュと、こうやってお莫迦な言い合いが出来るのも、この生意気な執事の尽力があってこそだ。
いまよりもまだ幼い頃、悪漢に
その後も。
私の生命を救ってくれた事を歯牙にも掛けず、それを己の立身出世の具にしないところも私が彼を気に入るところだ。
私が御父様にお願いして、執事に登用した時はものすごい渋い顔をされましたが。今おもえば、この執事の生意気な顔を歪めさせれたのはあのときだけでしたね。
──なら。
「ヴィーシュ、私の執事としてこれからもよろしくお願いしますね」
「……
ヴィーシュはここで初めて渋い表情をした。郷愁に似た感慨が篭った吐露に、私ははっとなる。
こんな莫迦げたやりとりが出来るのも、あと僅かである
私は伯爵家の子女。彼は使用人の息子。
その格差は果てしなく、遠い。彼は私よりもあらゆる面で優れているが、貴族と平民という身分が、彼の評価を妨げる。あの
──確かに彼は
それを、私は歪めてしまった。彼が欲しいと、そう御父様に望んでしまった。
私は思い詰めた顔をしていたのでしょう、ヴィーシュはわずかに目を見開かせたあと、こちらに微笑みかけてくれました。
しかし、すぐさまヴィーシュはそれを打ち消して
「お嬢様の猪突猛し……勇猛果敢な性格が旦那様の想像を超えていらっしゃるので、私めのような凡庸なものの手でも借りたいのでしょうね」
いやはや。と、肩を竦めて、まるで不出来な妹ができて大変だと言わんばかりに首を振る。
先程までのしんみりとした空気が霧散しました。そうですね、あなたはそういう人ですね。
──ふふ、一発どついてやりましょうか?
そう。これは
その後、私の渾身の
ああ、本当に。
私の執事は生意気だ。
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