その男も、要注意かもしれない。
崔 梨遙(再)
1話完結:800字
僕達が19歳の時、中学校の時の知人のカズヤ君という男と再会した。彼は浪人中で、勉強を頑張らなくてはいけないのに、性欲に頭の中が支配された男になっていた。中学時代の知人の陣内君に会い、女友達の多い陣内君に頼み込んで同じ中学の女子を紹介して貰った。カズヤ君が紹介して貰ったのは薫ちゃん。かわいくてスタイルの良い女の子だった。
カズヤ君と薫ちゃんの初デート、ファミレスで食事。食後のコーヒー。カズヤ君は言った。
「女の子は、自分でするの?」
「え! せえへんけど」
「俺はするで! こうやってなぁ」
身振り手振りで説明するカズヤ君。カズヤ君の目は血走っていた。薫ちゃんは、恐怖で泣いていたらしい。
どうしても、薫ちゃんと初体験がしたいカズヤ君、薫ちゃんの家の周りをウロウロしていた。カズヤ君はお近づきになる“きっかけ”を求めていたのだ。日が暮れてもウロウロしていた。カズヤ君は焦っていた。早く! 早く! 早くお近づきになりたい! そして初体験! カズヤ君は初体験を夢見て妄想を膨らませていた。勿論、目は血走っていた。
その時! ピアノの音が聞こえてきた。薫ちゃんは、幼い頃からピアノを習っていたのだ。カズヤ君は元吹奏楽部で音楽には詳しかった。
カズヤ君は、“今だ!”と思った。
スグに薫ちゃんに電話するカズヤ君。
「はい、何? カズヤ君」
「薫ちゃん、今弾いてるの、モーツァルトの2番やろ?」
薫ちゃんはビビった。“どこにいるの?”、“見張られてる?”、“ストーカー?”……
薫ちゃんは震える声で言った。
「3番やけど」
カズヤ君の恐怖のアプローチが“きっかけ”となって、薫ちゃんは陣内君と付き合うことになった。薫ちゃんが、“私、カズヤ君とは付き合えない。私が好きなのは陣内君やから”と、告白したらしい。僕等はカップルの成立を祝った。
だが、それを聞いて、カズヤ君は祝うどころか激怒した。
「初体験できると思ったから、薫で妥協しやんや。俺はもう、妥協はせえへんぞ!」
カズヤ君は最低な男だった。
その男も、要注意かもしれない。 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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