第2話 修理魔法と下準備

「これは結局転移魔法だったんだよね」

「ええ、はい。あまり魔法はうまくなく、このような結果になったのですが」 

 申し訳なさそうに言うモティ。目の前ではクロエが魔法で壊れた家を直していた。クロエが指を振ると、壊れた壁や家財がゆっくりと元通りになっていく。

「まぁ、元通りになるには半日ほどかかるだろうから。ここはこのままで」

 クロエはそう言うと壊れたドアを開いて家から出る。クロエが指を振るのをやめても魔法はひとりでに働き続けていた。主がいなくても動き続ける魔法を家にかけたらしかった。

 モティも続いて家を出て、空からはチャールズが飛んできてクロエの肩に止まった。

「それじゃあ、行こうかと思うけど。どこか見たいものとかあるの?」

「それに関しては問題ありません! 私、事前に計画を立ててきたのです」

 そう言うとモティは横に下げたカバンから紙を一枚取り出した。それはヴィラの地図とメモ紙だった。

 ヴィラの地図にはいくつも丸が書いてあり、メモ紙にはスケジュールらしきものがメモしてあった。

「ふぅん。細かく書いてあるね」

 地図もメモ紙も文字でびっしりだった。

「この旅が楽しみでいてもたってもいられず! 昨日はあまり寝れていません!」

 遠足前の子供のようなカーバンクルだった。

「ちなみにこれは今日一日で回るつもりなの?」

「いえ、2日に分けるつもりです!」

「宿は?」

「シルヴィどのよりクロエどのの家を間借りするよう言われているのですが」

「え」

 突然の申し出だった。

 人を家に泊めたことなんかないクロエだ。妖精なんかなおさらない。しかし、それも師匠は勝手に決めてしまったらしい。おそらく師匠に言わせればこれも修業の一環ということなのだろう。今までも散々やられてきたことだった。本当にそのつもりなのか、雑用を押し付けられているだけなのか。クロエにもその時々で良く分からない。

「まぁ、結構な額もらうわけだし、良いか」

 クロエはそう独り言を漏らした。

「なにか? やはりご迷惑ですか?」

「良いよ。大丈夫だよ、それぐらいは」

 ぱたぱたと手を振るクロエ。

「そんなことより予定を立てよう」

 クロエはじっとメモと地図を見る。

「はい、ぜひお願いします」

 モティは鼻息を荒くしながら言う。

 なにはともあれ、観光案内だった。クロエはうまくできるかまるで自身がなかった。しかし、やってみれば何とかなるだろうという思いだった。とにもかくにも宝石の山が欲しいのだから。

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