異世界で和菓子の布教を目指して

@kuma06830

第1話 

気がついた時には、異世界に転生していた。僕が自我を取り戻したのは、3歳の頃だった思う。僕が生まれたのは、農村部の農家の三男坊だった。家の中での扱いは長男、次男に比べてあまり良くないようで、それならなんで子供なんて作ったんだ!?と思ったがどうやら娯楽が無いようなのでどこの家も子沢山な家が多いようだ。


それから、この世界にはどうやら魔法と呼ばれるものが存在するようだった。魔法は魔力が使えれば誰でも使うことができるようで、魔力はこの世界の住人全員が持っている力のようだ。両親も、火をつけるのに魔法を使ったり、畑に水をやる時に魔法で水を出したり、服を乾燥させるのに使うようだ。ただ、魔力を使いすぎると倒れてしまうためみんな気をつけているらしい。


この世界では魔法で様々なことを行うため、魔法が使えなくては生きていくことはできない。三男で扱いの悪い僕は将来どうなるのかわからないが、魔法を早く覚える必要があると思った。幸い意識が覚醒してからというもの、体の中に不思議な力を感じていた。この力をどうにか火という形や水という形で外に出すことができれば、魔法という形で具現化するのだろうと直感する。僕のことは家の中ではあまり気にされていないため、魔法を知ってからは外に出てずっと魔法の練習をしている。


魔法の練習を始めてから2週間ぐらいが経ったと思う。初めて僕は魔法が使えるようになっていた。初めて使った魔法は、水を出す魔法であり、魔法を初めて使った嬉しさのあまり使いすぎて気絶していた。知らなかったことだが、魔力を使い切ってしまうと気絶するようだった。目が覚めると、家の中にいて驚いた。どうやら僕が倒れたのを見つけた村人がここまで運んでくれたようだった。


異世界にきて1番困ったのは言語だ。なんと言っているかわからず、覚えるのも規則性がわからないため非常に難しかった。しばらくして分かったことがあった。それは、家族の名前である。父はアベル、母はニア、長男はジル、次男はハリスだということだが、正直名前で呼ぶことはないため、たまに名前がわからなくなることも未だにあった。では、なんと呼んでいるかというと、お父さん、お母さん、お兄ちゃんと呼んでいる。しかし、兄たちはお兄ちゃんと呼ばれるのがいやらしく別の呼び方で呼べと言っているが、代案をくれないのでそのまま読んでいた。


この村は、他の村に比べれば余裕はあるが、子供たちを遊ばせておく選択肢はないようで大体5歳ぐらいから家事などの手伝いをさせているようだった。3歳の僕は今のところ何かしらの制限を受けることはなく、一日中魔法の練習に充てていた。魔法はイメージだと誰かが言っていた気がしたので、氷をイメージしてみる。するとゴルフボールより少し小さいぐらいの氷が、生成された。氷が作れたことに僕は嬉しくなって小躍りしていた。それからもいろいろな魔法を試してみることにした。なお、魔力を使い切ったり、使ったりしていると魔力が増えているのを実感した。


それから半年ぐらいが経過したと思う。歯もしっかり生え揃ったので食事が変わることに期待していた。それまでの食事では、麦などの穀物をゆっくり煮た、野菜が少し入ったお粥のようなものがメインであり、それに少しの漬物と川魚という感じだった。味は塩味のみであったが、山菜などで香りなどの変化も多少はあったので毎日変わり映えはしなかったが食べることはできた。


だが、これらの料理は前世でいう優しい味付けであまり美味しいとは言えるものではなかった。特に魚や野菜の下拵えは雑で僕からするとありえないものであった。やはり現代で舌が肥えていた僕からすると異世界の料理はあまり美味しく感じないようだ。だからと言ってこうしたほうが良いなどという事は、言語がまだわからないところも多く伝えることはできないし、伝えたとしても聞いてもらえるような雰囲気ではない。両親は僕のことを半放置している。これは、のちに知った事なのだが長男、次男、そして女の子は大切に扱われるようだが、三男以降は扱いが雑になるようだった。


前世、美味しいものを食べ歩くのが趣味で、自分でもよく色々なものを作っていた僕からすると、美味しいものが食べたくてたまらない。そうすればこの村では自身で美味しいものを作るしかないという選択肢しかないのだが、僕が小さいこともあり調理をさせてくれることは多分ない事、そもそも食材の種類があまりない事もあり、作れるものにも限りがあるだろうと思う。


因みに、この世界には魔物と呼ばれる存在がおり、村付近にもたまに出現するようで、これを狩れたときは肉なども出てきていたのを知っている。僕は歯が揃ってないのもあり食べたことはないがみんな美味しそうに食べていたので美味しいのだろう。それから鳥なども猟師が捕まえてくることもあるようで鳥などを食べることもあるようだった。


魔物を食べてみたい気持ちもあったが、とりあえずなんでもいいから美味しいものが食べたかった僕は、自身の身が守れる程度には魔法を鍛えることにした。それは、村近くにある森の中には魔物もいるからである。森の中は食材の宝庫であることはわかっているのだが、ここには村の決まりで小さな子を近づけてはならないという決まりもあるので、それなりに危険性があると感じたからだ。森以外の選択肢はないのか?と思うかもしれないが、山菜などについてはある程度詳しいが他のものについては、あまりわからなかった事、川は使うために色々とルールが定められているようで面倒くさいなと思ったので森という残った選択肢が、自動的に選択された形であった。


今の目標は、食材確保のために魔法を鍛えることだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る