蟹の恩返し

芝村想吏

第1話

蟹さんは海の底に住んでいる。いつも魚を捕って暮らしている。今日は風邪をひいて寝込んでいた。そこに郵便配達のタコさんがやってきた。


「郵便でーす。蟹さーん、郵便来てますよー」

「はい…なんですか」

「蟹さん、大丈夫ですか?体調悪そうですね」

「風邪をひいたみたいで…それで郵便は?」

「ああ、はい、魚ですね。イカさんからです」

「ふうん、イカさんから。印鑑押しますね」

「はい、どうぞ。お大事に」


もらってみるとそれは鯛だった。鯛は好物だ。


「ありがたい。今日狩りに行くのも辛いし、これをもらおう」


蟹さんのその日の夕食は鯛を食べた。美味しかった。


そしてその次の日には風邪はすっかり治った。元気になってみるとイカさんが送ってくれた鯛はかなり高級だったのではないかと思った。これはお返しをせねばなるまい。そう考えた蟹さんはイカさんの住所を知らないまま、海でイカさんを探すことにした。

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