第26話 いざ再会

 待ち合わせの場所は俺とジュード君の実家の間くらいにした。

 正直言って、ジュート君はもう家を出ているのだけど、マリス君のために週末実家に戻っていた。ジュード君の家族が、マリス君を支えてくれているようだった。他人事ながら嬉しかった。


 結構、うまいこと言ってるんじゃないか。

 俺がジュード君を見つけて来たおかげで、マリス君に家族ができたみたいなもんだ。もしかしたら、俺のことを恩人と思っているんじゃないかな、と期待までしていた。


 ジュード君は俺たちが深刻な話もできるように、居酒屋の個室を取っていた。支払いは俺だけど、店自体はそんなに高いわけではなかった。


 個室と言ってもパーティションのような仕切りがあるだけで、完全な個室じゃない。こんな店で飲んでもうまくないのに、金だけ払うのは嫌だなと思っていた。二十歳そこそこの若者だから、仕方ないか。自分で決めればよかったんだ。


 俺が先についてしまい、ジュード君たちは10分ちょっと遅れてきた。先にジュード君が入って来て、俺は立ち上がった。笑顔でマリス君に挨拶するつもりでいた。


「元気そうだね。よかったよ」


 しかし、ジュード君の後から入って来たのは、かなりぽっちゃりの男性だった。小柄で色白で、口の周りが吹き出物だらけだった。野球帽をかぶっているのだが、髪は剃っているみたいだった。俺は「マリス君?」と聞きそうになった。


「ご無沙汰してます」

 マリス君は頭を下げた。太りすぎて声まで変わってしまったみたいだった。

「太ってびっくりしてると思います。ストレスで過食になってしまったので」

 彼は恥ずかしがって目を合わせなかった。

「あれだけ大変なことがあったんだしね」

 俺は話を合わせた。太っただけならともかく、なんで頭がつるつるなんだろう。

「ストレスで髪まで抜けちゃって…思い切って、全部剃ってみました」

「あ、そうなんだ。大変だったね」

「マリは今は病院に通院してて、薬のせいもあって…」

「そっか…」

「薬飲んで三十キロ太りました」

「そうなんだ。でも、合ってるの?その薬?」

「ちょっと頭がぼーっとするけど、たぶん」

 

 彼の眼は死んだ魚みたいだった。視線が合わないというか。他の病院に行きたいけど、施設から通ってるから、そこしか行けないと言っていた。

「薬出して終わりって感じで…親身になってくれなくて」

「精神科の医者ってそんなイメージあるけど、やっぱり本当なんだ」

 俺たちは彼の体のことを30分以上喋っていたと思う。


 

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