第27話 近況
その次は、今、ジュード君がどんな活動をしているかを話していた。正直言って大した仕事はしていなかった。映画に出たり、グループに入ってアイドル活動をしているみたいだけど、俺は彼のニュースを聞いた試しがない。今は芸能活動をしている人が多すぎるんだ。インスタやTwitterをやってるだけで、芸能人気取りの人が多い。
俺たちはしばらく、マリス君の性被害のことを忘れて雑談に興じていたけど、俺は思い切って尋ねた。
「聞いちゃ悪いけど、君のお母さんって今どうしてんの?」
「捕まって、拘置所に入ってます」
お母さんの方はそれほど重い罪にならない気がした。
「でも、お母さんって病気なんじゃ」
「あれ、嘘だったんですよ」
「え?」
「病気で働けないっていうのが、嘘で…生活保護を不正受給してたんです。しかも、闇金に借金があるってマリに嘘ついて、家に金を入れさせてたんですよ」ジュード君が言った。マリス君は下を向いたままだった。
「闇金の取立っていうのも嘘で、闇金と母ができてたんです。僕がいる時だけ、怒鳴ったり、暴れたりしてただけで、普段は僕がいない時に外でご飯食べたりしてたそうです」
俺は言葉がなかった。
息子に売春させて、それで楽しく暮らしていたなんて、そんなことができる人間もいるんだというのがショックだった。
「だから、母も捕まりました。多分、実刑になると思います」
「当然だよ。相手の男は?」
「そいつも捕まりました」
「そうか。じゃあ、もう君は安全なんだ。君が無事で本当によかった」
「はい。本当にありがとうございました。江田さんが僕のことを探してくれてたって聞いて」
「うん。でも、なかなか見つけられなくて…君に会いたいと思った時は、もう、いなくなってた。なんで年がばれたの?」
「やっぱり、誰かに聞いてほしくて、職場の人に年をごまかしてるって言ったら、それをチクられて」
俺が話を聞いてやっていればなぁと思う。
「ごめん。俺、もっと色々できたと思って後悔してる」
「そうじゃないです。僕の方が謝りたくて」
マリス君は言いにくそうに、兄の方を見ながら言葉をつづけた。
「ホテルの部屋を取ってくれたのに、僕が勘違いしてしまって、すみませんでした。江田さんは純粋に好意でやってくれていたのに…。僕が馬鹿で。他にお返しできることってないなと思って」彼は思いあまって泣いてしまった。俺は首を振った。彼が俺にどんな気持ちでキスしたのかと想像すると、思い出すのも悲しかった。
「そんなの気にすることなかったのに」
「ごめんなさい」
「いいよ。そんなの」
俺はマリス君の手を握った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます