大文字伝子が行く270

クライングフリーマン

『正しくないアナグラム』(後編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。EITO前司令官。

 久保田誠警部補・・・あつこの夫。警視庁警部補。久保田管理官は叔父。

 原田正三警部・・・元新宿風俗担当の刑事。警視庁からのEITO出向。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 本郷隼人二尉・・・海自からのEITO出向だったが、EITOに就職。システム課長をしている。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向事務官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。


 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。


 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

 西部才蔵警部補・・・高速エリア署刑事だが、『片づけ隊』班長をしている。


 志村泰典・・・宮内庁長官。

 ケン・ソウゴ・・・かつては、『死の商人』グループメンバーだったが、実はイーグル国のスパイ(潜入調査員)だった。イーグル国独立後は、王子のスタッフとして働いているが、伝子に心酔している為、情報提供をしてくれている。

 ロバート・・・オスプレイのパイロット。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 ==EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの後方支援部隊である。=


 4月30日。午前8時半。オスプレイの中。

 眠る伝子に毛布を掛けてやり、なぎさはロバートの横の副操縦席に移った。

「ねえ、ロバート。今度、操縦、教えてくれない?それと、私と『寝ない』?」

「副隊長。酔ってます?酔っ払いは操縦しちゃいけないんですよ。操縦の件は、お互いの時間が空いたら。でいいですよね。後の方は・・・一ノ瀬さんで無くなったら、考えます。その場の感情で動くと、お互い後悔します。」

「日本人みたいね。」「言いませんでした?僕のお婆ちゃんはクォーターです。少し日本人の血が入っています。だから、EITO出向の任務は嬉しかった。なぞなぞ解けて良かったですね。2日後、にどういう意味があるか分からないけど、時間が出来たのは、いいことです。」

「ありがとう。一ノ瀬の三回忌が済んだら、一ノ瀬を離れようと思っているの。内緒よ。裏切ったら承知しないからね。」

「了解しました。」

 午前9時半。EITO本部。会議室。

「おねえさま。随分、すっきりされてますね。」と日向が言うと、「そうよ、さやか。なぞなぞが解けたから、夕べはたっぷりサービスしてあげたから。」と、伝子はヌケヌケと言った。

「いきなり、惚気かよ。」と、呟いたのは筒井だったが、「原田!何か言ったか?」と、伝子は言った。

「滅相もない。」と、原田は頭を抱えた。

「ピースクラッカーが、言わば暗喩的に、我々に伝えて来た、ってことは、あの投稿を見ている、監視している者がいるってことですかね。」と、草薙は言った。

「誰かが言っていたが、紳士的ななのかもな。邪魔者は・・・排除・・・かな?」

「警視庁から入電。久保田管理官です。」と、スピーカーから河野事務官の声が流れた。

 マルチディスプレイに、久保田管理官が映った。

「オトロシア大使館が爆破された。爆破されたのは、門扉だけだ。それと、もう一つ。時を同じくして、オコルワナ領事館が爆破された。知っての通り、双方とも戦争中の為引き揚げて、職員は1人も残っていない。何者かのパフォーマンスとみている。」

「エイラブ系ですか?」と、夏目警視正が尋ねた。「恐らくな。動きがあれば、連絡する。」

 マルチディスプレイから久保田管理官が消えた。

「エイラブ系は、事前に犯行声明を出さないのが特徴的だ。昨夜のピースクラッカーは、エイラブ系をけん制したのかも知れないな。」と、斉藤理事官は言った。

「理由を探る前に、答が出たか。その憲法記念日だが、ケンから大文字に手紙が届いている。関係しているかも知れない。」と、筒井は、手紙を伝子に渡した。

「公安の方に届いていたらしい。」と、開封する伝子に筒井は、付け足して言った。

 ざっと、読んだ伝子は顔色が変わった。

「筒井の推測通りだ。イーグル国王子が、憲法記念日に、お忍びで来日するらしい。先日、『宮様』が風邪を召されただろう?もう回復されたが、それを案じて、お見舞いに来られるらしい。皇宮警察とSP隊でお守りしてくれる、と報せが来ている、と書いてある。ピースクラッカーの投稿は、このことも暗示していたのかも知れないな。」

 皇宮警察とは、基本的に都道府県を管轄管理する警察と違い、『唯一国が設置する警察』で、東京と京都にある、特別警察である。そこで勤務する警察官は皇宮護衛官と呼ばれます。 皇宮警察は、唯一の国家「直営」の警察なのである。 儀仗など、儀礼的な護衛活動にも従事する。国内でも、あまり知られていないが、外国人は知らない。

 Base bookには、「黄金を振り返らない、みどりという子供はケンポウの達人らしい。四つの子供だ。迷子にならなければいいが。」と書いてあった。

「おねえさま。迷子にならなければ、は単に語呂合わせじゃない、ってことですか?」と問う田坂に、「よく言った、ちえみ。『守るべき者を守れ』、という意味だろう。」と、伝子は応えた。

「我々は。飽くまでもピースクラッカーとの闘いに備える。だが、この注意喚起も忘れない。」

 そして、憲法記念日当日。即ち、5月3日。午前10時。皇居三の丸尚蔵館。

 EITOからの要請で、臨時に開館予定だったが、園内の他の施設同様に閉館になった。

 なぎさ達エマージェンシーガールズが到着すると、敵はもう『勢揃い』していた。拳銃、機関銃、日本刀、火炎放射器、何でもありだ。ナイフも持っているかも知れない。

 リーダーらしき男が言った。「どうやら、『所払い』してくれたようだな。」「ちょっと、違うな、おにいさん。所払いとは、所在地から追放する処罰だ。今はあまり使わない言葉だ。」「国外強制退去か。」「ちょっと違う。まあ、いいだろう。お前がリーダーか。」

「お前らが言う『枝』だな。」「お前らが言う、ってよく聞く台詞だが、『枝』じゃないのか?」「ブランチだ。ついでに教えてやろう。ブランチ、ステム、ツリー、グローブだ。」「成程。ん?じゃあ、ダークレインボー以外にもツリーが存在するのか?」「さあな。お前の名前は?」

「副隊長だ。別名エマージェンシーガールズ2号。」

「じゃ、もう自己紹介タイムは要らんな。行くぞ!!」

 枝の合図で、500人から1000人に増えた集団は、攻撃を開始した。

 どこからか現れた、ホバーバイクに乗った、EITOガーディアンズが、胡椒弾ガトリング砲で、武器を携帯している者を目がけて胡椒弾を撃った。

 ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、改造して主に運搬や攻撃に使用している。胡椒弾とは、胡椒や調味料を原料とした丸薬で、鋼鉄の弾丸の代わりに使用し、撃つと飛散して、敵の鼻孔を刺激して、戦闘困難にさせる。

 続いて、マセラティとランボルギーニが登場。

 マセラティはガルウイングを開いて、田坂、安藤、浜田、大空が弓矢隊として、矢を放った。矢は主に肩や太ももを狙い、刺さった矢の先端には、痺れ薬が塗ってあった。

 ランボルギーニからは、本郷が火炎放射男目がけてスノーボール弾を放った。3発しか撃てないが、フリーズガンより威力がある。

 日向は、ブーメラン隊を率いて、拳銃を持っている者を倒して行った。

 あかりは、シューター隊を率いて、走る敵の『アキレス腱』目がけてシューターを投げた。シューターとは、うろこ形の手裏剣のことで、先端には、やはり痺れ薬が塗ってある。

 銃火器を台無しにされた敵は、日本刀や、よく分からない刀を振り回し始めた。

 エマージェンシーガールズはバトルロッドとバトルスティックの闘いに切り替えた。

 半数以上の男達が倒れた時、1台のジープがやって来た。

 午前11時半。

 ジープから降りた男は、先の『枝』を、」容赦無くライフルで撃った。

 当たりは、静まり返った。あまりのことに、エマージェンシーガールズもピースクラッカーの部下の集団も唖然とした。

 ライフル男は、言った。

「宮内庁長官は、捕まえた。お前らの『頭』と交換だ。悪くない取引だろ?」

「確かに、悪くない取引だ。」どこからかスピーカーを通して、伝子の声が響き渡った。

 遡ること1時間半。

 午前10時。国賓館。

 ケンの部下達とSP隊は、エイラブ系ギャングと対峙していた。

 現れた、エマージェンシーガールズ姿の伝子とあつこは、ブーメランで参加。100人いたギャングは、投降した。

 ケンがやって来て、「大文字。皇居三の丸尚蔵館に急げ。宮内庁長官が誘拐され、ここから連れ出された。これを貸してやる。」と、伝子に言った。

 そして、ケンが口笛を吹くと、どこからともなく馬が現れた。

「ありがたい。また、借りが出来たな。」「気にするな。急げ!!」

 そして、午前11時半。

 馬で現れた、あつこと伝子。

 あつこが乗る馬の後ろにいた、伝子は、あつこの肩に飛び移り、プロテクター脇から出した鉄扇を投げ、飛び降りた。

 当てられた、『枝』の男は、「なんじゃあ、こりゃあ!!」と言って、その場に頽れた。

 男の胸は、何やら白いモノが撥ねていて、側に鉄扇が落ちていた。

 ライフルが転がったままだった。それを、ピースクラッカー集団から拾いに行こうとした腕をムチがしなって当たった。稲森が投げた鞭だった。

 飯星と井関は、ジープに駆け寄り、長官のロープを解いている伝子とあつこを手伝った。

 残った集団は、ヤケクソでエマージェンシーガールズに向かったが、リーダーを失った集団は脆かった。

 正午。どこからか、お昼休みを報せるチャイムが鳴った。

「長官。お怪我は?」「ロープの後がヒリヒリ。拷問は受けていない。」

 伝子は、それを聞くと、近寄って来た、本郷に「病院に搬送してくれ。」と、託した。

 あつこは、インカムを通して、白バイ隊にランボルギーニの先導を依頼した。

「終ったのね、おねえさま。」「ああ。終った。その『枝』がスパイだったんだろう。陽動ではなく、エイラブ系の言いなりで動いたんだ。自宅から誘拐されるので無く、国賓館から誘拐、とはな。念の為、警視庁のホワイトハッカーチームにハッキングするように草薙さんから依頼して貰って正解だった。エイラブ系が狙っていたのは、勿論、皇室情報だった。ダークレインボーを利用しようしたが、ピースクラッカーの目は節穴じゃ無かった。」

 なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、EITOの簡易通信機である。

 30分後。西部警部補と愛宕警部率いる『片づけ隊』が到着した。

「先輩の後輩に産まれてきて良かった。」「変な褒め方するなよ。」

 愛宕のスマホに、みちるからの通信が入った。愛宕は、スピーカーをオンにした。

「おねえさま。やっぱり一番役に立つ妹は、私よね。」「うぬぼれるな。でも、手下の玉井には、よくやったと伝えてくれ。よく間に合ったな、このプロテクター。」

「おねえさま。それ、スーパーガールのプロテクターよ。間に合わせでも、役に立って良かった。正式なプロテクターは、今製造中。次回がいつか分からないけど、きっと役に立ちます、って言ってたわ。」

「あ。この馬、どうしよう?」と、あつこが言うと、「僕が返して来るよ、あっちゃん。」と、後から来た久保田警備が言い、馬に跨がり、去って行った。

「大文字さん。いつもご配慮ありがとうございます。愛をSP隊に紛れ込ませて頂いて・・・。」

「どういたしまして。こちらこそ、いつも裏方ありがとうございます。」

 空が暗くなったから、まさか夕立の前触れか?と頭をあげた、なぎさに見えたのは、ブルーインパルスだった。

「そうか。『帰り』か。」

 伝子シスターズの3人は、飛行機雲をじっと見ていた。

 ―完―

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