17. たった1枚の写真
17. たった1枚の写真
お昼を食べてからボクと葵ちゃんはそのままショッピングにむかう。さっきからずっと『間接キス』のことが頭から離れないし、心臓はずっとドキドキしている。
ふと葵ちゃんを見ると、その唇は柔らかそうで、きっと温かくて……ボクはそんなことを考えていたらついニヤけてしまう。でもすぐに我に返ってその妄想を打ち消すように頭を振るけど、どうしても考えてしまう。
だって好きな子と間接とはいえキスしたんだよ?しかも相手はあの葵ちゃんだ!結局ボクが新しいのを注文すると言ったけど、笑いながら『全然大丈夫』って言ってたし……
……待てよ?そのアイスティーはそのまま葵ちゃんが……そんなことされて意識しない方がおかしいよ!
でも……ボクと葵ちゃんは友達同士のはずだし、きっとこれはただのスキンシップに過ぎないんだ。そう自分に言い聞かせるが……それでも心臓のドキドキは止まらない。
葵ちゃんと手を繋いだ時よりもずっと……それ以上にドキドキしているのが分かる。このままじゃおかしくなりそう……
「ねぇ雪姫ちゃん?」
「えっあっなに?」
「良かったら……写真撮ってもいい?」
「写真?」
「うん。この前友達と話してたらさ、雪姫ちゃんの話題になってね?写真とかないから上手く説明できなくてさ?」
この前のお昼休みの話だよね……確かにしてたよね。
「えっと……私の話したの?」
「うん。あっ!でもこの秘密の関係はナイショにしてるから。ただの友達ってことにしてあるよ。ダメだった?」
「ダメじゃないけど……写真……恥ずかしいかな」
「あはは。でもさ、雪姫ちゃんのこと自慢したいんだ!私の友達に!」
「え?」
「だから……お願い。ね?」
葵ちゃんは上目遣いでボクを見てくる。そんな顔をされたら断れるわけがない!でも……やっぱり恥ずかしいし、緊張するからあまり乗り気ではないんだけど……
でも葵ちゃんのお願いなら聞いてあげたいな。それにボクのこと自慢したいって言ってくれるのは素直に嬉しいしね
「うん。いいよ」
「やった!ありがとう!」
そう言って葵ちゃんはスマホを取り出すと、そのままボクにくっつく。腕越しから伝わる体温がとても熱い。
「ほら雪姫ちゃん。もっとこっちに寄って?」
「う……うん」
ボクたちは密着しながら写真を撮る。正直すごく恥ずかしいけど、葵ちゃんが嬉しそうな表情をしているから良しとしようかな。
でも……ボクの心臓の音聞こえてないかな?大丈夫だろうか?そんなことを思いながらも葵ちゃんがその写真をボクのスマホにも送ってくれたので確認する。
するとそこには満面の笑みを浮かべる葵ちゃんと一緒に写るボクの姿があった。その葵ちゃんの笑顔はとても可愛くて、見ているこっちまで幸せな気分になってくるほどだ。
まるで……恋人同士のように写るその写真。脳内で『白瀬勇輝』に置き換えてみると一気に顔が熱くなる。そんなボクの様子を見て葵ちゃんが言う。
「どうかな?可愛く撮れてるかな?」
「うっうん!葵ちゃんすごく可愛いよ!」
「え?……私のことじゃなかったんだけどな……でも嬉しい。ありがとう」
葵ちゃんは少し恥ずかしそうにしながら自分のスマホで写真を見る。ボクもそのまま自分のスマホで写真を見る。お互いしばらく会話もなくスマホを見つめる。
たった1枚の写真だけど、不思議と葵ちゃんとの仲を深めてくれたように感じた。
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