15. この気持ちに素直に
15. この気持ちに素直に
映画を観終えてから近くのカフェでお昼を食べることにした。しかも……向かい合う席ではなく、隣同士。
そして注文した料理が届く。それを口にするけど正直味が分からないくらい緊張している。しかも隣からいい香りが漂って、葵ちゃんの近くに居るだけで緊張してしまうし、その横顔がとても可愛くて目が離せなくなる。
ボクは本当に恋をしているのだろうか?確かに推しに対する気持ちとは違うと思う。だってこんなに胸が高鳴らないし、ずっと見ていたいなんて思わないから……でもこの気持ちは何なんだろう?
「雪姫ちゃん?どうかした?」
「あ……いや……なんでもないよ」
「今日は本当にありがとうね!私ずっと観たかった映画だったから、凄く嬉しい!」
そんな無邪気な笑顔を見てしまうとますます意識してしまう。でも……ボクに出来ることはなるべくいつも通りに振る舞うことだけだ。
「私も嬉しかったよ」
そうは言ったけど、結局ボクは葵ちゃんに何もしてあげられていない。ただ一緒に映画を観てお昼を食べているだけ……本当にこれで良かったんだろうか?
「雪姫ちゃん?」
そんなことを考えていたらまた心配されてしまう。だから慌てて笑顔を作ると話題を変えることにした。
「あ……あのさ!葵ちゃんって、どんな映画が好きなの?」
「あのさ雪姫ちゃん。もしかして……私と一緒にいるの楽しくない?」
「え?そんなことないよ!」
「でもさっきから、なんか上の空っていうか……何か考え事してるし……」
「そんなことないよ!私、葵ちゃんと居るの楽しいから!」
そんな必死に取り繕うボクに葵ちゃんは笑顔を見せてくれる。
「ありがとうね雪姫ちゃん。でも無理しないでいいんだよ?もし私のことが嫌いならハッキリ言ってくれていいから」
「え?」
なんでそんなことを言うんだろう?ボクは葵ちゃんのことが『好き』なのに……どうしてそんなこと言うの?そう考えている間にも、どんどん葵ちゃんの表情が暗くなっていく。
「ちっ違うの!私は葵ちゃんのこと好きなの!」
ボクは思わず言ってしまう。自分の気持ちが分からないけど、でも……もうそんなことはどうでも良かった。
だって葵ちゃんが悲しそうな顔をしているから、ボクはそんな顔をして欲しくないから!
「雪姫ちゃん……」
「ただ映画を観て、ご飯食べて……ただそれだけしか出来なくて……私……葵ちゃんに何もしてあげてないって。葵ちゃんの恋人になれてるのかなって……ただ遊ぶ友達なのかなって……勝手に悩んでて……ごめん……」
ボクは自分の気持ちを素直に伝える。すると葵ちゃんは安心したような表情を見せると、ボクの手を握ってくれる。温かいその手は心地好くて安心する。
そして葵ちゃんはボクの目を見て話し始める。
「良かった……私嫌われちゃったのかと思ったから。それにね?私も雪姫ちゃんと同じ気持ちなんだよ?」
「同じ気持ち?」
「うん!だって、こんなに可愛い子と2人っきりでお出掛けなんて緊張するし!私も雪姫ちゃんのこと好き……女の子と付き合いたいってワガママ言ってるけど……でも……まだこの気持ちが良く分かってない。本当に雪姫ちゃんに恋愛してるのか、友達としてなのか。だから……私も雪姫ちゃんと同じ気持ちだと思う」
照れたように笑う葵ちゃん。その表情があまりにも可愛くて思わず見惚れてしまう。
本当に葵ちゃんは可愛いと思うし、やっぱり『好き』だと思う。でも……これが恋なのか?まだボクにはよく分からない。でも、葵ちゃんと一緒に居れば、いつか分かる日が来る気がする。だから今はこの気持ちに素直でいようと決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます