10. 恋してる?

10. 恋してる?



 翌日。今日は月曜日。ということは言わずもながボクは学校に登校している。もちろん『白井雪姫』ではなく、『白瀬勇輝』として。


 教室に入りいつもの席につく。ホームルームが始まるまで談笑するクラスメート。ボクはいつものように1人だけど……


 そんなことを考えていると、教室のドアが開き誰かが入ってくる。葵ちゃんだ。今日も可愛すぎる……葵ちゃんはそのままボクの隣の席につく。


 昨日見せたくれた色々な可愛い表情、お揃いのペアリング。そんな色々なことが頭に浮かび、もしかしたらそれは、ボクだけが知る葵ちゃんなのかもしれないと思ったら笑みがこぼれてしまう。


 その時ふとボクは真凛に言われた言葉を思い出す。確かに……ボクは男として全然ダメだし、自信もないし、リードされてばかりで葵ちゃんに何かをしてあげたわけじゃない……でも……それでも……初めて女の子と2人きりでデートして、何かが変われた気がしたんだ。


 そして……ボクは不思議と葵ちゃんに声をかけていた。


「あっあの……」


「え?」


「おっ……おはよう……」


「……あ。おはよう白瀬君」


 葵ちゃんは一瞬、戸惑いの表情をみせたけどすぐに笑顔になり挨拶を返してくれる。そしてそのまま前を向く。


 ボク……今……挨拶した?


 自分から……葵ちゃんに……


 今までこんな経験なんてなかったし、陰キャでオタクのボクが自分から挨拶をしただけで嬉しくなる。そして葵ちゃんから返された挨拶も嬉しかった。


 たかが挨拶だけど、何かすごいことを成し遂げたような達成感に満たされていた。



 そして午前中の授業が終わり昼休み。ボクはいつものように1人寂しくお弁当を食べていると、隣のグループの会話が聞こえてくる。


 もちろんそこには葵ちゃんもいる。そのグループには茶髪のウェーブで少し今時のギャルっぽい東城千夏さんと、黒髪のセミロングで真面目で大人しい新島由香里さんがいる。2人も1年生の時から同じクラスで葵ちゃんとは親友である。


 今までは全然気にならなかったけど、今日はすごく気になる……聞き耳を立てるなんていけないことだけど……どうしても気になってしまう。


「ねぇ葵?週末ヒマ?」


「あっ土曜日ならいいよ?日曜日は用事があって……」


「用事?ウチら以外に?」


「珍しいね葵ちゃん。いつもは恋したいから、出逢いを求めて街へ出掛けようって誘ってくるのにw」


「いつもじゃないよw」


 葵ちゃんはそう言いながら笑っている。本当に……葵ちゃんは真面目に恋愛したいんだな。


 ボクとの……いや『白井雪姫』とのデートは遊びじゃない……本当に恋をしようとしてくれている。そう思うと複雑だけど嬉しくなる。


「ところで葵。スマホで何調べてんの?」


「ん?映画。今週観に行こうかなって。どんなのがいいかなぁ……やっぱり恋愛もの?ベタかな……う~ん……悩む~!え?……何?」


「葵……もしかして彼氏でも出来た?」


「なんかすごい楽しそうに悩んでるし、なんか恋してる?」


「え?いやいや!彼氏なんてできてないよ!……でも恋してるように見えるんだ……そっか……」


 その言葉にボクはドキッとする。


「は?恋してるってこと?」


「まぁ……一応そんな感じかな。私にとって……大切な人?」


 そしてまたその言葉にドキッとする。


 もしかして……ボクのこと言ってる?それに……大切な人?嬉しいけど……少し恥ずかしい……

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