9. 結果。嬉しかった
9. 結果。嬉しかった
家に帰り、ベッドに寝転び天井を見上げながら右手のペアリングをみる。シルバーの雪の結晶のようなものがついてる可愛いペアリング……お揃いのペアリングなんて、今まで付けたこともなかったし、想像したこともなかった。
でも……凄く嬉しい……葵ちゃんとお揃いのものを持てるなんて。思わず笑みが溢れる。こんな幸せな気分になるのは初めてだ。
するとそんな幸せな気分から一気に現実に戻すかのように真凛がボクの視界に入る。
「うわぁ!ビックリした!」
「ちょっと!大声ださないでよ、こっちの方がビックリするって」
「部屋に入るならノックくらいしてよ」
「したよ何度も。呼んでも気持ち悪く笑ってるだけだったし」
気持ち悪いは酷いだろ……せっかくいい気分だったのに。ボクは少し不機嫌な顔をすると真凛はそのペアリングに気づく。
「ん?どうしたのおにぃ?アクセサリーとかつけてたっけ?」
「べっ別にいいだろ……」
「てかそれ……ペアリングじゃん。おにぃそういうの選べるんだ?意外なんだけど」
「ちっ違うよ……これは……その……選んでもらって……」
「は?……ダサ。普通そういうのって男が選んであげるんじゃないの?本当にダメだね。まぁ女装してるから女の子なのか」
そっそうなの?もしかして……葵ちゃんもボクに選んで欲しかったのかな……でもボクはこういうの選んだことないし……葵ちゃんは優しいからきっとボクを気遣ってくれたのかな……そう考えると申し訳ない気持ちになる。
そしてペアリングをまだ何も入っていないアクセサリーボックスに大切にしまって、そのままリビングに行き、夕飯を食べる。なんか……食欲なくなったな……ボクは男として全然ダメだよな……
「あら?どうしたの勇輝。勇輝の好きな唐揚げよ?食べないの?」
「え?あっ……うん……」
「莉桜姉。おにぃはヘタレで自信なくしてるだけだから放っておいていいよ」
そう言って心配そうにボクを見る莉桜姉さん。本当に申し訳ない……でもボクは男として全然ダメなんだ……そう考えるだけで落ち込んでしまう。
「というかさ、その人っておにぃのなんなの?」
「え?いや……その……友達……」
「友達?なのにお揃いのものを買ったくらいであんなに嬉そうにしてたの!?はぁ……マジでキモいんですけど。しかも女の子に選んでもらってる時点で男として終わってる」
「そこまで言わなくてもいいだろ……」
「こらこら真凛。勇輝は嬉しかったんだよね?今まで友達っていう友達いなかったもんね。どうだった?デートしてみて……楽しかったでしょ?」
「うん。楽しかった……けど……」
「ならいいじゃない。それに真凛、勇輝は男としてダメって言っていたけど、私はそう思わないわよ?」
「なんで?おにぃのどこ見てそう思うの?」
すると莉桜姉さんは優しい笑顔でボクを見る。そしてゆっくりと口を開くと話し始める。
「……だって最後まできちんとデートできたんでしょ?それなら相手の子も勇輝とのデート楽しめたってことじゃない。それならいいじゃない?まぁ私も恋愛経験が多いわけじゃないから偉そうなこと言えないけど。反省するところは反省してまた次頑張ればいいじゃない?」
確かに莉桜姉さんの言う通りかもしれない……ボクは葵ちゃんをちゃんと楽しませることができただろうか?不安で仕方がない……けど、それよりも嬉しかったんだ。
「……そうだね、ありがとう莉桜姉さん」
「ふふ。どういたしまして」
「本当に莉桜姉はおにぃに甘いよね」
「あら?甘いかしら?」
そうだ。悔やんでも仕方ない!また週末デートするんだから、その時に頑張らないと! ボクは決心を固めると決意するのだった。
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