2. 彼女の秘密
2. 彼女の秘密
ボクはお気に入りの喫茶店で憧れの藤咲葵さんと出会ってしまった。
彼女とは入学した時から同じクラスだけど、きちんと話したことは今まで一度もない。その彼女が今ボクの目の前に座っていて、しかもボクに話しかけてきてくれている。こんな奇跡……男の白瀬勇輝のときじゃ無理な話だ。
「あの……白井さんはどうしてこの喫茶店に?」
「えっと……わ……私はたまたまこの喫茶店を見つけて……それで……ケーキが美味しくてほぼ毎週通ってます……」
「そうだったんですね。私もツキイチくらいで来ますよ。ここって穴場ですよね?」
「うっうん」
ボク……本当にあの藤咲さんと会話してる!しかも……こんな近くで!彼女はボクが『女装』してることを知らない。だからこうして普通に接してくれる。
しかも彼女は人気者でボクはクラスでも目立たない存在。もしバレたら……ボクの平穏な日々は終わってしまうかもしれない。そんな不安を抱えながら彼女と会話をする。
「あの私は高校3年生で17歳なんですけど、白井さんは?」
「え?あ。私は……18歳。えっとファッションの専門学校に通っていて……」
さすがに隣の席の男子だとは言えないし、同い年だと言えば色々聞かれそうだし……咄嗟に嘘をついちゃった。でもボクは4月3日生まれだし18歳は合ってるから。
「じゃあ1つ歳上なんですね」
「そっそうだね。あの……藤咲さん……敬語じゃなくて大丈夫だよ?」
「え?じゃあ雪姫ちゃんでいい?私は葵って呼んで」
「うん……あっ葵ちゃん……」
もう名前で呼び合う仲に!?大丈夫かな距離詰めすぎかな。それにしても藤咲さん……いや葵ちゃんは本当にオシャレで可愛いなぁ……こんな美少女になりたいよ。
「ファッションかぁ。確かに雪姫ちゃんオシャレだよね。そのブランド私も好きだよ。今日は着てないけど何着かお気に入りの服持ってるし」
「えっ?そうなんだぁ。このブランドは可愛いのが多くて、色彩とかも好みで、私は胸がないからボディラインが目立たないこういうワンピースとかが好きで、あとあと流行りの服が多いからつい買っちゃう……あ。えっとごめん1人で盛り上がって……」
「え?なんで謝るの?全然平気だよ。それに今のテンション上がってる雪姫ちゃん……可愛かったよ?」
「可愛い!?」
「うん」
「あっ……ありがとう……」
恥ずかしさで顔が熱くなる。でも……葵ちゃんに可愛いって言って貰えたことがすごく嬉しかった。それから彼女は学校の話や趣味のことなど色々と話をしてくれたけど、正直何を話したかは覚えていない。ただ彼女の笑顔を見ているだけで幸せだった。
こんな幸せな時間がずっと続けば良いのに……そう願っていたけど、そんな時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。時計を見ると1時間以上経っていた。そろそろ帰らないと……
でも……まだ彼女と話したい!もっと彼女のことを知りたい!!そんな欲求がどんどん大きくなっていった。その時葵ちゃんはあることをボクに話し始める。
「ねぇ雪姫ちゃん。あのさ……『れんかの』ってアプリ知ってる?」
「え?『れんかの』って……レンタル彼女のサービスの?」
「……実は今日待ち合わせしていたのは……私……『レンタル彼女』サービスを利用して……」
「え?」
突然の爆弾発言にボクは言葉を失う。レンタル彼女?葵ちゃんが??学校でも男子から人気でモテてる彼女が???混乱していると、さらに彼女の口から信じられない言葉が飛び出す。
「あ。その違うの!私が彼女になるわけじゃなくて……私の方が彼女を探していたの」
「え……?」
どういうこと?衝撃すぎる。つまり葵ちゃんは女の子が好きなの???
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