第2話：思わぬ展開。
時刻はもう夕方・・・もうさほど僕に与えられた時間は残っていない。
今日だけの半日デート・・・明日にはお互い普通の友達にもどってしまう。
そう思うと、ちょっとだけ切なさが込み上げて来た。
だめだ・・・僕がしっかりしないと・・・。
さあ、お姫様を連れて最後の晩餐へ行くか。
それから僕は高坂さんを、とっておきの店に連れて行った。
商店街を抜けて少し歩いたら、すぐ目的の店が見える。
店の名前は「福ちゃん」広島ふうお好み焼きのお店。
僕はお店のマスターとは懇意にさせてもらってる。
マスターは、ちょっと
素敵なお店なんだ。
僕はイラストを描くのが得意だから知り合いに頼まれてマスターの
似顔絵を描いてあげたことがきっかけでマスターと親しくなった。
マスターは自分の似顔絵をプリントしたTシャツを自慢げに着ている。
「お好み焼き？」
「そうだよ・・・美味いから」
店の中に入ると、「いらっしゃい」っ言われる前に、早速マスターから
先制攻撃にあった。
「うちはカップルはお断り」
「お好み焼き焼いて、まじ熱いのに・・・ますます熱くなるだろ」
それを聞いて彼女は笑った。
ちょっとリラックスしたみたいだった。
高坂さんは店の雰囲気と美味いお好み焼きとカキフライと山芋トロ鉄板を食べて
満足そうだった。
「あ〜美味しかった」
喜んでくれてる。
「そう、よかった・・・また来れるといいね・・・あ、ごめん」
「うん・・・そうだね・・・」
福ちゃんから出た僕たちは、カフェのテラス席で休憩した。
外は、すっかり日が暮れて星がちらほら輝きはじめていた。
急遽、誘ったから、とりとめてサプライズ的なこともないデートだった。
「今日はありがとう・・・僕のわがままに付き合ってくれて」
「うう〜ん・・・私、楽しかったよ」
「こんなに充実してたの久しぶり・・・」
「そうよかった・・・喜んでくれて・・・」
「君が付き合ってくれて僕も楽しかったよ、ほんとありがとう」
「・・・・・・・・」
「・・・あまり遅くなると君のご両親が心配するからそろそろ帰ろうか？」
「あの・・・私、今まで何を見てたんだろ？」
「どこを見てたんだろ？」
「え？・・・」
「私のほんの近くに、こんなに素敵な人がいたのに・・・」
「気づかなかったなんて・・・」
そう言うと彼女は泣き出した。
「え？・・・どうしたの？・・・高坂さん？」
「僕、なんかいけないこと言ったかな？」
「ごめんね・・・小鳥遊くんのこと今まで気づかずにいて・・・」
「私のこと想っててくれてたんでしょ？・・・」
「だから誘ってくれたんだよね」
「私の、うぬぼれじゃなくて、そう思っていいんだよね」
「高坂さん・・・」
「そうだけど・・・ただ僕は僕の好きな人に少しだけ一緒にいてほしかった
だけだよ」
「同じ時間を君と共有したかったんだ・・・」
「それって告白？」
「告白？・・・・」
「好きって言ったよ、今」
「あっ・・・」
「ああは、口が滑った・・・気にしなくていいから・・・」
「じゃ〜私の方からお願いしていいかな？」
「な、なに？お願いって？」
「
「いいかな？」
「まじで？・・・ちょっと待って、本気で言ってる？」
「本気・・・嘘なんかじゃなくて・・・本気だよ」
「小鳥遊くんはイヤ？」
「いや・・・イヤとかかじゃなくて・・・口が裂けてもイヤなんて言わないけど」
「ただ、思わぬ展開って言うか・・」
「今日、他の男子に告っておいてフラれたからって、だからっていきなり心変わり
した訳じゃないんだよ」
「分かってくれる？」
「うん、分かるよ」
「じゃ〜私と付き合ってください・・・お願いします」
そう言って高坂さんは僕に頭を下げた。
たしかに彼女を誘った時、僕には下心なんかなかった。
ただ、素直に彼女といたかっただけ・・・彼女を元気付けてあげたかっただけ。
だから僕は半日だけ高坂さんといられたら、それでよかったんだ。
それだけだよ。
でも嬉しい・・・今、僕は最高に嬉しいんだ。
僕と高坂さんはカフェからの帰り道、どちらからともなく手をつないでいた。
僕の名前は「
明日から憧れだった高坂 優奈との夢のような日々がはじまる・・・。
つづく。
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