第7話

部屋に戻り床に着く準備を済ませる。


剣術の先生が手配出来るのに三日は掛かるようだ。

護符術については明日から特訓を始めるようだ。



寝る前にこの世界の陰陽道のおさらいをしたいと思い、本棚にある初級の陰陽術書を開く。


(……何だこれは…一体)









 













そこには未来では考えられないような滅茶苦茶な理論が書かれていたのだったのだ。


何だ…?霊力の総量で等級が決まる?いやいや霊力の緻密な操作と術への理解力に比例するだろ…

使える術は生まれつき決まっている?

いやいや確かに難しいが全くでは無い。現に前の俺は木ノ行以外の五行も行使していた。…まぁほぼ時ノ術しか使っていないが…




何なんだこの書は…未来と違いすぎる。

明日の父様の講義の時に"未来から来た存在感"だとバレないようにこの滅茶苦茶な理論を頭に叩き込まないと…。


この水準の内容ならば三十分程度で覚えるだろう。


しかしこの頃の俺はこんなのも分からなかったのか…本当に才能が無かったんだな…

なんだか虚しい気持ちになったのだった。





























朝日に照らされ目が覚める。今日は父様の講義の日だ。

高揚し鼻唄を歌い出したい気分だ。

肌小袖から着替えて父様の書斎に向かう。


途中笹貫にあった。


「おはよう御座います。白夜様」


「おはよう綾香」


挨拶を交わし、綾香と別れる。

昨日も行った遣り取りだが何度交わしても嬉しい

この先ずっとしたい事だ。

そんな事を思いながら目的地に着いた。父様の書斎の襖をノックする。


ーーーコンコン


「白夜です。護符術を学びに参りました。」


少し間をおき、優しい父様の声が聞こえる。


「入りなさい。」


そっと襖を開け中の風景をみる。

部屋の中には書斎机に整理整頓された沢山の陰陽道の本に資料。それに呪具


あぁまたこの部屋が見れるなんて…


感傷に浸っていると父様は不審そうな顔をしながら


「如何した?早く入りなさい。」


「はい!」


部屋に入り浅く椅子に腰掛ける。


「あはは!そんなに緊張しないで良いよ。今日は護符術の基礎…入門から始めるから安心してね」


「分かりました!」


…中々緊張が解れない。身構えるのは良い事だがやり過ぎるといけないな。


「じゃあ始めようか?先ずは護符についてだね」


父様は優しい声音で話し始める。


「この世界には霊力という力が存在するね?」


そうだこの世界霊力に満ち溢れている。霊力が宿らない物など無い。


「護符というのは平たく言うと呪印を刻んだ紙だ。呪印の種類は大きい分けて三種類ある。


一つは攻撃札。文字通り札を媒体に攻撃を放てる札だ。適性が無い行でも使える事が特徴だね。」



この札は多分使わないだろう。だって俺は五行全て扱えるのだから。


「二つ目は防御札。長く結界を貼れたり守る事が出来る札だ。」


…この時代は札が主流だったのだ。未来では呪印を刻む事で結界を貼っていた。


「最後三つ目は補助札。これは自身の能力を上げれたり回復出来る札だね」


補助札。これまた久しぶりに聞いた単語だ。未来では身体能力向上の術なんかもあったから。


「今までの内容で分からない事はあったかな?」


「いえ。大丈夫です。」


「そうか…白夜は飲み込みが速いなぁ…じゃあ早速紙に呪印を刻んでみようか。まずは私達に適性のある木ノ行の攻撃札。この札紙と呼ばれているな紙に書くんだ。この紙を用意した後、墨を準備する。そして墨に自分の霊力を流し込むみながら攻撃の呪印を描く。」


ふむふむ。成程。


「白夜もやってみて」


早速俺もやってみた。墨に霊力を流し込みながら紙に呪印を刻む。


……かけた。


「父様出来ました。」


「随分早かったね!初心者は墨に霊力を流すのは難しいのに白夜は凄いね!」


…そうなのか?


攻撃札の他に簡易結界の護符、霊力向上の護符も幾つか作成した。


「さぁてどの程度の出来具合かな?庭で試してみようか。」


そう言われて俺たちは庭へ出る。


「じゃあ発動させてみようか?あの木に向かって攻撃をしてみよう。札に意識を向けてみて…うんそんな感じ。そうしたら札に命じてみて…発動しろとね」


俺は言われた通り発動と心の中で念じる。

すると札が浮かび上がり、呪印が輝き発動する


木ノ行初段・風刀


札から発せられた技は木を何本容易く真っ二つに切り裂いた。


うん。最初にしては良い感じじゃ無いかな?


そう思いながら父様の方を向く


(…えっ?)


父様は目を見開き口も開けっ放しだ。


「あの…父様…?」


えっなんか俺しちゃったの?失敗だったのかな…


「凄いな…」


聞き取れず思わず声を出す。


「え?今何と…」


父様は俺の方を見遣り言う


「この札の威力は最上級だよ。初級陰陽術の護符なのに…凄いな…札から出して良い威力では無いよ…それにしても白夜は才能のかたまりだね!すごいよ!初めて出来た札が最上級に匹敵する力をだすなんて!」



そ、そうなのか?この威力は普通だと思ったのだが…


「他の札も試してみよう!」
















結果から言うと父様曰く全て最上級の護符に匹敵する威力だったらしい。簡易結界の護符なのに最上級の硬さの結界だったり父様が俺の作った霊力向上の護符を試したらもはや異常なレベルで霊力が増えたみたいだ。


「凄いよ!本当に!最上級に匹敵する札ををこんなにも作れるなんて!!!宮仕いの陰陽師でも出来ないよ!こんな事!」



……そ、そうなのか???



「私が教える事なんてもう何も無いね!安定して呪印を刻めてるし後は初級、中級、上級、最上級の呪印を覚えるだけだね!初級でこの威力ならば最上級は如何なることやら…中級の護符からは近くにある森で試そうか。被害が出そうだからね!」




(そうなのか?あと呪印を覚えるだけなんて…)

そんな事を悶々と考えていると…


「あっ白夜!明後日には剣術の先生が来るからね!父様権力と人脈をフル活用しちゃった⭐︎」


その一言で思考の海から引き上げられる


「ーーーッ!そうですか!分かりました!手配して頂き有難う御座います!」











次は剣術だ

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