第2話
『時空ノ陰陽師ー緋月白夜』
千年後の世界で時間操作の力と空間支配の絶対的な力で数々の妖の王を屠り人々から恐れ敬われていた最恐の陰陽師として名を轟かせていた。
だからと言って最初から強かった訳ではない。
幼少期には五大陰陽師家の木行を扱う本家に近い分家に生まれながら陰陽術を行使出来ない無能。
それが俺だった。霊力も少なく札も書けない正真正銘の塵だった。
だから貴族の連中らは俺を馬鹿にしていた。虐めだって受けていた。だけど俺の父様や母様、そして唯一の友にして幼馴染の神狩美空や侍女頭だけは味方でいてくれた。本当に救われていた。確かに俺の大切な人だった。
しかし当時の塵な俺には何も守りきれなかった。
だから二度と失わないように只管強さを求めた。
霊力を陰陽術を研究した。妖を調べ尽くし、戦い続け漸く空想上でしか出来ない理論を構築し霊力を無限に使えるようにした。そして俺の時間の陰陽術を創り上げた。
才能がなく平々凡々どころか劣っていた俺は血反吐を吐くような日々を送った。実際禁術も使用していた為全身に痛みが走り眠れない日も沢山あった
何にもなれない俺がせめて大切な人が大切にしていたものを守るために必死に努力した。努力し全てを守れる頃にはもう守るものがなくなっていた。
ーーー遅すぎたのだ。全部。
家族も、仲間も、全部全部なかった。残ったのは常人離れした力だけ。
ー何で滑稽なんだろう。
力を身につけた意味が無いでは無いか
だからやり直す事にした。
過去に戻る為の霊力を貯蓄し過去に戻る事をいつしか時の帝に知られ勅命を受けた
ーーーー『過去を変え未来を守れ』
そして霊力が溜まった俺は術式を発動させ過去に戻った。
(ーーーこれは現実だ。夢なんかでは無い)
窓の外に見える空や障気を感じない空気。そして大切な両親の姿。過去に戻った事を五感で感じる
コンコンー襖が二回なる。
「はい。どうぞ」
俺は返事をした。
襖は開きずっと会いたかった母様が目の前にいた。
「白夜君おはよう」
その一言。一言がとても愛おしく感じる。
「おはよう御座います母様」
ずっとずっとこうしたかった。
「あの母様。今、月光…陽光何年でしょうか?」
一応確認する。
「……白夜君さっき泣いていたように見えたし如何かした?あっ!悩み事?それともまた虐められたの?」
「いえ違います…ご心配頂き有難う御座います
ただ陽光何年か忘れてしまっただけです」
「そうなの?今はね陽光九百五十年の水無月十二日よ〜」
「そうでしたね!教えて頂き有難う御座いました!」
改めて分かる。ここは千年前だ。
「いえいえ〜♪白夜君朝餉の準備がもうすぐ整うから居間に着替えと顔を洗ったらいらっしゃいな♪先に母様はいっているわね」
「分かりました!」
そう言って母様は一階に降りて行った。
…陽光九百五十年年良かった!成功だ!確かに成功した!千年後はそもそも年号が違う月光だ。
間違いない千年前だ。
俺が雑魚で無能と蔑まされていたあの頃
ずっと恋焦がれていたらあの頃
まだ大切な人が生きている頃
今度こそ全て救ってみせる。
そして水無月十二日は悲劇が起きる一月前。
俺の前の人生の起点。
今は何も出来ない無力な人間では無い。
一月も猶予がある。未来で失った物を"今"救おう
千心が躍る。こんなに昂るのを感じたのは千年ぶりだ。
決意を固め母様達が待っている一階の居間へと
向かう為の準備を始めたのだった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます