第19話 揺れる思い

そして、下げていた頭を上げるとフードが外れて少女の顔があらわになった。


「美少女…………いや待て、俺にはサラちゃんと言う心に決めた人が…………」


しかし、アイリスはサラちゃんにも負けず劣らずの美少女……いや、美女であった。


そして、少し涙目の彼女を見て


心が揺れる……


「お嬢さん! 泣かないで……

わたくしめが力になって差し上げます。」


『ドック……どうしたのですか?』


『子供の君には、分からない事もあるよ。

俺は、思ったんだ!!!

サラちゃんを助けても世界が滅んでしまっては、元も事もない。

だから、魔王を倒す旅をしながら魔吸石を探す事にするよ。

それに、もしかしたら魔王を倒したら手に入るかも知れないし……』


『言ってる事は、分かるのですが……

切り替えが早すぎて思考がついて行きませんでした。』


そして……

俺達は、アイリスと魔王を倒し魔吸石を探す旅をする事になった。



それから……

俺達は、森を進んでいると数体のオークと出会した。


「……あの数なら問題ないわね!

倒しましょう。」


「いや、ちょっと待って下さい!

何やら様子が変です。

何やら話し合ってる様です! 少し様子を見ましょう……」


『フィン、ロゴを変える。

あいつらの会話を盗み聞きしてやろう!』


「それは、名案です!」


「何が名案なの?」


「少し静かにして頂いても宜しいでしょうか。」


「あ……ごめんなさい。」


《そうだ! 今晩だ! 


今晩、この先の獣人の村に奇襲をかける。


アイツらを野放しにしていたら同族達が危険にさらされる。


アイツら、ただじゃおかねーーー!


戦士を集めろ!!!》


「…………断片的ですが、この先の獣人族の村を今晩! 襲う計画を立てている様です。

獣人の村に、この事を伝えに行きましょう!」


「何でアンタに、そんな事が分かるのよ!

魔物の言葉がわかる訳じゃないのに」


「実は、魔物の話す言葉が分かるんですよ。

この服のロゴが変えられる魔物に限りますが……」


「何言ってんの? そんなの嘘よ。

洋服のロゴがガイコツからブタになった程度で魔物の言葉が分かる訳ないでしょう。

もし、それが本当なら私にも貸してみなさいよ。」


「それをしたいのは、山々なのですが……

この服、一生脱ぐ事が出来ないのですよ。」


「そんなはずないでしょ! 来た服が一生脱げないなんて……嘘をつかなくても、良いわよ。」


「よしっ! フィン変われ!!!

少しくらい顔が良いからって、調子に乗りやがって……目にもの見せてやる!」


『やめて下さい! ドック……

なら、この前! 覚えたスキルを使ったらどうですか?』


『この前……!?』


『分身のスキルの事だと思われます。』


『分身……ああ! あの意味の無いスキルの事か。

あのスキルを使えば、アイリスはオークの言葉を理解できるのか? 大賢者。』


『可能です!』


「よしッ! なら、分身発動!!!」


そして、フィンとアイリスの前には

ドクロの描かれた全身タイツが現れた!


「アイリスさん! この服を着てみて下さい。」


「…………ぜっっっっったい嫌よ!

こんなダサい服! こんなの着るくらいなら死んだ方がマシよ!!!」


「よしッ! フィン変われ!!!

お望み通りに殺してやろう。」


「ちょっと、待って下さい!

アイリスさんじゃないですか、この服を貸せと言ったのは……」


「貴方の服を貸せと言ったの!

こんなダサい全身タイツを貸してくれとは一言も言ってない。」


「…………確かに」


『…………確かに、じゃねーよ!

テメーら! まとめて冥土に送ってやろうか!!!』


「ちょっと、待って! 

では、アイリスさん……そのコートを貸しては頂けないでしょうか!?」


「今度は、何をする気なの?」

「何をする気なんだ? フィン……」


そして、フィンはアイリスからコートを受け取ると


「ドック……これを食べて下さい。」


『ああ……そう言うことね。

了解!』


そうして、俺はアイリスの汗と匂いが染み付いたコートを食べ始めた。


『フィン……なかなか良い仕事をするじゃねーか。

コート自体は美味しくは無いが……アイリスがさっきまで着てたモノってだけで興奮する』


「ちょ……アンタ! 何してんの!?

服が……服を……食べてるの…………?」


そうして、アイリスのコートを食べ終えた俺は分身で出した全身タイツをコートへと変身させた。


「はい。

これなら、どうですか!? 

元々、貴方が着ていたコートです。」


「ちょ……ふざけないで!!!

こんな胸元に、ドクロが描かれたコートを着て歩けと言うの!?

死んでも嫌よ! 私のコートを返して!」


「もう、元通りには出来ないので我慢して下さい。

僕は、アイリスさんの望みを出来るだけ叶えたいだけです。

もう、文句を言うのはやめて下さい!

それが嫌なら、もう! 余計な事は言わないでください。」


そう言い放つフィンは、とても冷たい目をしていた。

2人に挟まれて、色々と考えて出した結果だ! これ以上の文句は言われたく無いのだろう……


そのフィンのけんまくに気圧されたのか……アイリスは、渋々コートを着る事に


一応、言っておくが……

分身の方の服は、取り外しが可能でフィンみたいに一生脱ぐ事が出来ない物ではないので、安心して欲しい。


そして、アイリスがコートを羽織ると……


俺の中で、何かが変わり始めた。


「…………何だ!? この感覚は!!!

意識が……意識が……」


『意識が分裂致しました!

並列意思を習得。』


なんと!!! 

アイリスの服の方にも俺の意思が現れた。


「…………やっぱり、恥ずかしい。」


「……仕方ない! なら、小さく縮んでやろう。」


「何、この声!?」


そうして……

アイリスの胸元の大きなドクロは、どんどん縮んで行き!

アイリスの左の胸元の山頂へとスッポリと収まった。


「……まぁ、このくらいなら。

我慢できるわ」


「それは、良かったです。」


「そうだな! 俺もこの方が嬉しい。」


「……さっきから聞こえる。

この変な声は、何!?」


「…………アイリスさんにも、ドックの声が聞こえるのですか?」


「ドック……知らないけど、変な声なら聞こえるわよ。」


「実は、そうなのだよ! フィンくん……

何故か知らんが俺の意識は分裂したみたいだ。

だから! これからは、言いたい事を言い合えるのだよ。」


フィンは、さっき怒っていたドックを思い出して……


「それは、不味くないですか……!?」


「何を言っているのだ! フィンくん

大丈夫だよ。

僕はね……過去の過ちなど気にしないのさ!

それよりも、オッパ……いや! アイリスと話せる事で、今まで誤解していた部分をちゃんと説明できる事の方が嬉しいのさ!」


「…………それならば」


「ちょっと、何なの? ちゃんと、説明してよ!」


それから、俺とフィンはアイリスに

大体の経緯を話した。

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