第33話 あのクイズ答えるの無理だろ
そして迎えた体育祭。もう生徒の登校は終わり、今は開会式をしている。勿論俺も開会式——
「い、痛い……」
ではなく、お手洗いに行っていた。急に腹痛が襲って来たので抜けたのだ。
ちなみにここは2階のトイレ。理由は1階のトイレに行くよりサボれるかなと思ったから。3階じゃないのは……気分。
トイレから出てこのまま開会式サボろうかなと思っていると、この少し左に佐奈田裕理と泰晴達が邂逅した空き教室があった。俺はその教室の扉を開ける。
ガラガラと言う音がし、扉が開かれる。勿論中に人は居ない。あるのは静寂とカーテンが閉められているにしても朝とは思えないくらいの暗闇だけ。
「……戻るか〜。多分もうそろそろ終わるくらいだろ」
扉を閉め、踵を返し、歩き始める。扉の中央から少し上にある四角形の窓から他の教室の中を覗く。……あの空き教室と変わらない、同じく暗い教室。俺は階段を降りて玄関へ行く。靴を履き、校庭へ行くと丁度開会式が終わったくらいだった。はい、ドンピシャ。
俺は教室に戻ったり競技の用意をする人達を横目に泰晴と水初の元へ歩く。
「よ。開会式は終わってしまったみたいだな」
「白々しいな、翔梨。どうせサボったんだろう?」
「おはよう、翔梨!」
「おう、おはよう。泰晴もおはよう」
「おはよう」
俺はある人を見つける為に辺りを見回す。だが人が多くて見つけられなかった。大人しく諦めようと思っていたら、泰晴がニヤッと笑う。
「冬奈さんならあそこだ。あそこの人集り」
「……別に探してはねえよ」
「嘘が苦手なようで」
「うるせ」
泰晴が爽やかな笑みを浮かべる。その人集りを見てみると栗色のショートヘアがあった。……あいつもあそこに居るのかよ。すると、水初がパンと手を叩き、声を出す。
「さあ、今日1日楽しみながら頑張ろう!」
他の高校では体育祭は2、3日行われるらしいがこの光雪学園の体育祭は1日で全ての競技を終わらせる。終了は17時頃になり、その後キャンプファイヤーがあるらしい。
『10分後にクイズを開始しますので校庭に集まってくださいね〜!』
そんな放送が聞こえて来た。生徒会か? ……わかんね。
「ほら、クイズだよ! 早速楽しんでこー!」
水初がいつもより更にテンションを上げる。体育祭でクイズなんてするんだな。
そして丁度10分ほど経った後、クイズを開始すると言う放送が流れ、校庭に集まる。
『クイズ大会がもうすぐ始まります! クイズは全部で3問! 最初の2問は光雪学園に関する問題! そして最後の1問はスペシャル! この学校に隠した答えを今日の19時までに皆様に探してもらいます! そして最後の問題を正解した人にはなんと賞品が! では、早速1問目に行きましょ〜!』
1問目の問題が出され、解答される。その流れがもう1度続く。どちらの問題もこの学校をかなり調べている人くらいしかわからないような問題。なんだよ前校長先生の名前を答えよって。前の校長なんて1年生でわかるやついないだろ。と言うか2、3年生でも答えられて無い人居たし。
『さあ! 次はお待ちかねのスペシャル問題! 19時までに答えを探して生徒会の役員に報告してください! では、問題を言います!』
少し間を置かれた後、また放送で声が発せられた。
『外界より深い暗闇に光が差された時、輝く石の名が知られる』
……他とは雰囲気が違うな。スペシャルだからか? だからって厨二過ぎる気がするが……難しくする為みたいな?
「……泰晴さんや。私、わかりません」
「……俺もだ」
隣で水初と泰晴が呆けている。ちなみに俺も全然わからん。
『では、クイズを終了します! 次はクラス対抗リレーです! 休憩時間の後皆様遅れずに集合場所に来てくださいね!』
放送が消え、少し静寂が流れた後、砂を踏む靴の音と話し声が聞こえ始める。
「さ〜て、じゃあ私達も行こっか!」
「ああ、そうだな。じゃあまたな、翔梨」
「ああ」
泰晴と水初は集合場所へ歩いて行った。俺はリレーには出ないので近くにあったベンチに腰掛ける。
「……今日は結構暑いな〜」
「25℃らしいです」
俺の独り言に反応する声があった。俺が声のする方へ視線を向けると、最近よく見るようになった栗色のショートヘアがあった。
「……胡桃か。冬奈に群がるのはもう良いのか?」
「私達を虫のように言わないで欲しいです」
そんな冗談を言い合ったのち、胡桃は俺の隣へ座って来た。
「お前はどの競技に出るんだ?」
「玉入れと綱引きです」
「マジか」
まさかの完璧な同志だった。お前も俺と同じだったか……。
俺と胡桃は集合場所に居る他とは違う雰囲気を出す美少女とその近くにいる2人の友人達を見る。
「冬奈とは仲良くなれたか? 昨日は泰晴達とも話していたようだが」
「う〜ん、まあまあです。前よりは仲良くなれたとは思っているです。でも、何故か水初さんから体育祭終わった後に遊びに行こうと誘われたです」
「へえ、良いじゃ無いか。友達ゲットだ」
「お前も友達少ないです」
「ちょっと静かにして貰っても良いですかねおチビさん?」
「なっ! お前こそその口を閉じるです!」
おれと胡桃がわちゃわちゃと雑談をしていると、また放送が聞こえて来た。
『それではこれより、クラス対抗リレーを始めます!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます