第6話 大地が灼熱の原因
翌日――
引っ越しを考えて昨日探索をしたが、ここから出られる道を見つけることができなかった……
快適に生活する目標を立てたけど、もうここでも普通にある程度の生活を送れている。
周辺燃え盛ってるから暑いっちゃ暑いんだけど、この身体で転生されたお蔭で猛暑日くらいの暑さで済んでるし。
土魔法で家作れたし、水魔法で風呂も問題ない、何なら外気熱で勝手に沸いてお湯になってくれる。
【
“住めば都”って言葉もあるし、地獄の入り口に家を建てたけど、もうここに住めば良いかな~。
そう思っていても、やっぱり何とかしたい部分は色々ある。
まず、真っ先に思い付くのが食料の問題。
肉については、狼がいるからあれを狩れば問題無さそうだけど、調味料も無く美味しくない。無いため焼いて食べるという原始的な方法でしか調理できない。
流石にフライパンや鍋が無いのは不便だと思い、パジャマやベッドを作った時の要領で作ってみたものの、まだ魔法に慣れていないためか造形物は歪な形になってしまう。フライパンも鍋もデコボコして焼きムラが出来る。
それと添え物が圧倒的に足りない。
食べ物だって魔法で作れば良いじゃないか? 確かにその通りだけど、もし万が一MPが必要な時に無かったらどうなるか、それを考えるとおいそれと魔法を使うべきではない。私のMPがどれくらいあるのかも見当が付かないし……
この場所の気温が何度あるのか炎すら通じない私には分からないが、灼熱だからなのか、草や木が全く見当たらない。
この家が建ってる部分もカラカラになった土ばかりで、例え種があったとしても育たないだろう。生育しないってことは多分四十度超えてるのではないかと予想しているが……
家も土魔法で作ってあるから、熱による劣化が早い。一部分は既に陶器に似た手触りになっている。
灼熱の原因はなんだろう? それを解決して快適に過ごす下地を作らないといけない。
あと、人間である限りは、やっぱり太陽が欲しい。
ずっと真っ暗闇に炎の赤で染められて
まあ、地獄って伝承や伝説によると、地の底を突き抜けて更に突き進んだ異次元空間のようなところにある場所らしいし、太陽の光なんか届くわけもない。
これについては、ちょっと考えがあるので後々試してみよう。
次に、話し相手が全くいない。
トロルならいるけど、アイツら私を敵対視してるし、頭悪そうなんだよな~。
私の読んでいた漫画の中には魔物に名前付けただけで進化するってのがあったけど、それだけで進化してくれたらどんなに楽だろう……主に知性方面が進化してほしい……
ダメ元でコミュニケーション取りに行ってみようかな?
昨日ちょっと蹴散らしたし、少しは大人しくなってくれてると良いんだけど……
高い壁と通路だけ見てて気が付かなかったんだけど、上を見ると吹き抜けで真っ暗だけど空 (?)が見えている。
「ってことは、私羽生えてるからここ飛んでいけるんじゃない?」
そうだよ! わざわざ何時間もかけてあの通路を歩く必要は無いわけだ!
上空に飛んで周囲を見渡してみる。
思った通り、この地獄の門広場とトロルの集落だけ壁で囲まれているだけで、周囲にも地面がちゃんとある。
ここが魔界だからって、『行動範囲にしか地面が無いような不思議空間』ってわけじゃないんだ!
真っ暗でよく見えないけど、見える範囲だけで火を噴いてる大き目の火山が一、二、三、四、五、六、七個ある。
灼熱の原因はコレか……
このエリアのすぐ近くまで溶岩が流れている。ここは何かバリアめいたものがあるのか、広場までは入ってこない。
これは私の考えだけど、『地獄』という場所が、ある種の神域だから溶岩が到達しないのではないかと予想。悪いことした人間の魂を浄化させる機関だから溶岩で潰されてしまうと都合が悪いとか。まあ、予想でしかないからただ単に運良く潰れてない可能性もあるけど……
「活火山がすぐ近くに七個もあれば、そりゃ熱いわけだよ」
魔界から出ることは……出来そうもない。現世に帰れそうな道は見当たらない。
「現世には帰れないか……」
改めてここから出られないことを痛感し、絶望感に苛まれる。
「死んでしまったんじゃ、もうしょうがないか……」
くよくよ悩んでも仕方がない。ここを少しでも住みよく快適に生活できるように努めよう。出来ることなら、魔界・地獄全域を快適に住めるような場所に!
と思ったけど、地獄はそのままで良いか、現世での極悪人が刑を受けるためにある場所なんだから、どんな激しい拷問受けてても知ったことじゃない。そもそも地獄に来るようなことをしてきたヤツの方が悪いのだ。きちんと苦痛を味わって魂を浄化して、真っ当な転生をしてもらいたい。
となると、地獄の外にあるこの魔界には住んでいる生物が大勢いるだろうから、そちらの生活改善をしてやろうではないか!
とりあえず、昨日作った家、通称:我が家へ戻って来た。
「トロルとコミュニケーションを取るとしても、手土産が必要ね」
現世なら菓子折りでも持っていくところだけどお菓子が買えそうな店は見当たらない。
「こんなに荒廃している土地だから、食料も不足してるだろうし何とか作物が作れたら良いんだけど……」
試しに魔法で木を生やしてみる。
木はどんどん成長し、私の身長の三倍くらいにまで成長する……予定でいたが、成長している最中にすぐさま火が着き、ほどなく焼け落ちてしまった。
「はぁっ!? 何これ!? 生木が燃えるって、ここの外気温何度あるの!?」
一昨日作ったパジャマや布団が瞬時に発火したのはこの外気温が原因だったのか!
『地獄だから娯楽は許しませんよ!』って理由じゃなかったのは安心した。
現世の常識では、生木が自然発火するはずがないと思い込んでいたから、『外気温が暑すぎる』なんてところに思い至らなかった。
私は熱を感じていないが、この場所はこんな瞬時に火が着くほどの温度だということを認識できた。
ケルベロスの方をチラッと見て思わず呟いた。
「何でアイツこの熱で大丈夫なの?」
当のケルベロスは
あぁ……地面が毒の
「三つ全部の首が寝ることはないって書いてあったと思ったんだけど……昔読んだ話と違うな……」
一つの首が寝て、二つの首が起きてるはずだけど……三つともガッツリ寝てるやん!
種は魔法で作れそうだけど、この灼熱の土地で作れる作物など、恐らく存在しない。種を
「何とかならんかな……誰かアドバイスくれる人がいれば良いんだけどな……うわっ!」
突然、人が私の近くを横切った!
どこから来たのかわからないけど、突然現れた!
ここに来て三日経つけど、人間を全く見たことが無かったから失念してたけど、ここって地獄の入り口だから悪いことした人が歩いてやって来るんだよね。
「そもそも地獄に来るほどの極悪人なんて中々いないから何日かに一人くらいしか見かけないのかもしれない」
歩いて来た人は、目の焦点が合ってないように見える。生気や覇気のようなものも感じられない。無思考で地獄へ向かって歩いているという感じ。服装は
「木が発火する温度なのに、
亡者は熱で身体がただれてきているが、意識が無いためか意に介さず歩いて行く。
あの
「私みたいに自由に思考できてるのが特殊で、ここに来た人はあれが普通なのかな? まあ、私は自称日々
亡者はケルベロスをよそに地獄の門へ入って行った。
ケルベロスは相変わらず寝てる。
「アイツ、自分の仕事してないな。何人か脱走させててもおかしくなさそう」
今日は種のことは諦めて、我が家に戻った。
作物と種については、ここを快適にするために絶対に考えなければならない。
何でも知り得ることができるようなスキルでもあれば楽なのにな……そんなことを考えながら風呂入って寝た。
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