ナースコールを首に巻く
明鏡止水
第1話
とあるところに死にたがりの女がいました。
ある日、あんまり落ち込むのが続くので両親は少女を病院に入院させました。
死にたがりの少女は好きな男の子がいました。
しかし、その男の子は集団リンチに遭い、意識を失い。
ようやく助かっても性格がすっかり変わり、かっこよかった見た目もダラリとして気持ち悪くなりました。
そんな風に思う自分が嫌になったわけではありません。
でもショックではありました。
世の中には酷いことがあるけれど、わたしには起きないと信じたい。
信じていたいけれど信じることにもおびえてきた。
少女の心は壊れたのです。
やがて、死にたがりになる少女。
いざという時にだけ鳴らす、ナースコールがありました。
握りやすい円錐に、オレンジ色のやわらかいボタンついたなかなかの長さのものでした。
それを、やんわり首に巻き付けます。
世の中ぜんぶ、気持ち悪い。
あいつを好きだったのも、気持ち悪い。
リンチというのもどれくらい殴られたり蹴られたりするのか分からない。
それより、死にたい。
死ぬのは怖くない。
自殺とは、自ら、じぶんを、殺すこと……。
結局、そのままの状態で夜間の巡視の看護師に見つかり、隔離されたような部屋へ移動になりました。
もう少しで、わたしはじぶんを、ころせたのかな……。
いまのわたしは、人に生かされたのか。
余計な事なのだろうか。
安楽死はなぜ、この国にはないのか。
気持ちが辛いです。どうか私を殺させてください。
神様とやらに祈ってみます。
少女が祈っていた時、集団リンチに遭い、意識不明に陥ったかつての少年は、そのころ。
自分に笑いかけてくれる店員のストーカーをしていた。
欲しくもない商品を注文するのに話しかけたり、探してもいない商品の場所を毎日、店に赴いて聞いていた。
髭の生えた顎、分厚い眼鏡、仕事用の汚れた作業着、何年も使い古しているリュックサック。見るものから見れば不審者のようだった。事実、特定の店員にこだわり、つきまとっている。
少年は人に救われているのだろうか。給料の何割かを、その店の商品の注文に使う。もちろん毎回同じ店員に声をかけて。
「このロープをください」
ナースコールを首に巻く 明鏡止水 @miuraharuma30
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