第2話 猫と勧誘

「起きろ、起きろ!」勇ましい怒号で猫は目が覚めた。そこは無機質なコンクリートに囲まれた味気ない白い小部屋だった。

「やっと起きたか!やりすぎて死んだかと思ったぜ」ブルースカート教の信者と同じ格好の男で右手に包帯を巻いた男が猫にまたがりうるさい声を満遍なく浴びせてきた。「うるせぇ!どけ!俺は戻る気ねぇぞ。」猫は暴れた。「違う違う、俺は教団への反逆者さ。アンタの力が必要なんだ。」

男は猫から離れ弁解をした。


3年前

まだB地区だけがブルースカート教に支配されていた頃だ。信者数は五十万を超え支離滅裂な勧誘と布教という名の殺人で人々を恐怖させた。

B地区はこのカルト教団に何か対策しようにも、教団は見た事もない様な武器や生物兵器で襲ってくる。つまり宇宙人が攻めてきてるの同じで軍は毎日戦いの残業だったのだ。

そして猫は元々教団の生物兵器だった。高度な知能と武器の取り扱いが教団一だったので、最高戦力の信者として扱われていた。

「いやー今日も沢山「勧誘」できましたね!」

猫に後輩信者が話しかける。「あぁそうだな」猫は無愛想にそう言って武器を磨いていた。「先輩、あの質問なんですけど。なんで普通に勧誘しずに殺しをするんですか?」

猫はまた無愛想に答える「教祖は説法が苦手だから、恐怖で支配しようとしてるのさ。

だってお前だって幹部の息子ってだけで入ったんだろ。ここの生物兵器や信者はブルースカートの教えすら知らない奴もいるからな。

お前もそうだろ?」信者は笑った。「確かにそうですね。もはや宗教じゃないですね、ブルースカートの教え、あなたは知ってるんですか?」猫は少し考えた後に話し始めた。「今この世界の太陽は様々な環境的要因で光を失っている。そのせいで人々の生命の光は消え失せようとしている。それを救ってくれるのがブルースカート様だ。

つまり教祖を信じれば太陽が輝きを戻すと言う事だ。どうだ胡散臭いだろ。」

猫は少し笑った「教祖と少数の信者と幹部はマジにこの教えを信じて布教してる。それ以外は関係者か屈服した一般人かここで作られた生物兵器だけだ。教祖は宗教の才能はなかったが頭が突き抜けて良かった。頭の良さと狂った思考からこの宗教ができたんだ。

まぁ、宗教って思わないでただのテロ集団だと思ってればいいさ」

扉からやかましいノックが鳴り響く。

「おい!集会が始まるぞ!早く来い!」

先輩信者が猫達を怒鳴った。「まずい!遅れると拷問を受けるぞ!」猫と信者は急いで大広間に移った。

「間に合った!」広間にはブルースカートを履いた信者で溢れ返っていた。すると広間で一番目立つ高台に教祖が現れた。「み、みなさん

よく集まってくれました。き、今日はとても大事なお話があります。絶対に聞いてください。」

教祖はどもり声に似合わずゴリゴリに筋肉がついており上裸だ(もちろん青いスカートを履いている)。「このブルースカート教はみ、皆さんのおかげでここまで大きくなりました。それでこれからB地区以外の国にも進出しようと思うのです。」所々から歓声が聞こえる。「あれ、歓声がす、少ないですね。これは世界進出への偉大な二歩目なのです!」そうゆうと教祖は片手についている大砲で信者達を撃ち始めた。信者達は泣き喚き、偽りの歓声をあげた。「教祖様万歳!教祖様万歳!」

十五人目を撃ち抜いた後教祖は落ち着いた。

「ふぅ、あまり怒らせないでください。幹部達はもう隣のカボチャ帝国に同盟を結びに行ってます。あなた達もいつでも戦える様に準備してください。話は以上です」教祖はスタスタと戻っていった。

「大丈夫か?」猫が後輩信者達を介抱し教会の医務室まで案内した。教会はB地区の1番目立つ建物だ(教祖が目立つ様に他の建物を崩壊させている)。教会にはなんでもそろっていた。娯楽室、医務室、武器改造室、生物兵器製造室、大広間の食堂、信者1人1人の部屋、なんでもある(全てB地区から奪ったもの)過ごしやすさから来る信者もいるがほぼ毎日に銃を持って人を殺したり誘拐するので逃げていく者がほとんどだ。ここ以外にも教会支部としてB地区と他の国の境界線に幹部がいる小さい教会がいる。

猫は考えていた、B地区をここまで色々と絞り取ったのに他の国からも取るなんて。しかも同盟を結ぶだと、ここは国じゃない、

ただのテロ集団だ。絶対に戦争になり勝てない事は教団で1番強い猫が1番わかっていた。

猫はそもそも此処にいる理由はない、戦っても自分が負けるわけがない。金ももらってなければいつも食べるのは安いカリカリ。

武器だってなんでも使えるという理由でケアさせてくれない。

考えれば考えるほど嫌な考えが猫を襲った。

猫は気がつくと入り口の門番信者を撃ち抜き逃げていった……


「じゃあ、お前はだれだ?」猫は当たり前の質問をした。「俺は「シナモン」だ。「反逆軍ホワイトスカート」の総長をしている。

よく見ろ履いてるスカートが白いだろ。」

シナモンはスカートをパタパタさせている。

「とりあえず今の教団の現状を話そう。

まず、ブルースカート教はB地区以外の国と同盟を結んだ。襲わない代わりに人口の100%をここの信者にしろとね。当然他の国々は怒って戦争になった。でも教祖の圧倒的な力と科学力で少しずつ同盟を結ぶ国が出来たんだ。そして、最初に同盟を結んだカボチャ大帝国がブルースカート教内に派閥を作ったんだ。それを真似する様に他の国々も教団内で派閥を作った。

そして今じゃあ世界中に広まった殺戮集団だ。俺はブルースカート教を破壊する為に仲間を集めているのさ。だが教団の力は圧倒的だ、だからこそ教団の元最高戦力のアンタがいれば、勝てる見込みが出てくる」

シナモンは懇願した「お願いだ。我々に協力してくれ。奴らを潰すにはあんたの力が必要不可欠だ!」猫はあしらった。「嫌だね、俺はもう戦いには行かない。それに俺が強かったのはブルースカートの武器があってこそだ、ただのライフルとかで戦えってんならお前らに勝つ見込みはないよ。」

猫はシナモンを無視して出口を探した。

「あんた、自分が何に襲われて気を失ったか忘れたのか?」猫の頭に襲われた時のフラッシュバックが映る。「そうゆうことか」

シナモンは立ち止まった猫に近づく。

「そうだ。我々はただの市販品の武器で敵うとは到底思ってない。私は奴らに勝つ為、独自で兵器を完成させた。あなたの「相棒」も奴らから盗んだ。」そう言うとシナモンは猫に特殊な大砲の様な物を渡した。

それは細長い猫の形をしており銃口がお尻で持ち手が顔だった。猫が教団にいた時の専用武器だ。「「CATちゃん1号」だ。捨ててあったが直したので使えるはずだ。」

CATちゃん1号は教団が猫の為に作った猫の専用武器だ。弾は毛糸で糸の形を変え、網にしたり、首を絞めたり、応用が効くトリッキーな猫の相棒だ。「よく見つけたな。でもなこれがあるからって俺がここに入るメリットが何もないんだが。危険な事はもう懲り懲りなんだよ。ゆっくり家でテレビ見てるのが俺の今の幸せなんだよ。」シナモンはピンときた。

「あんたを連れ去った時、燃えている小さな家があったけど多分あんたの家だぜ。」

猫は目を血走らせてシナモンに近寄る。

「はぁぁ!?誰が!なんの目的で!…お前らかぁぁ!」シナモンは必死に弁解する。「違う!俺じゃない!多分B地区担当の派閥だろう。」

猫は怒りを抑えれない様だった。「あいつら殺して金奪ってまた家を建てる!今生きる意味ができた。お前も協力しろ!」

シナモンは嬉しそうに猫と握手した。

「そういえば、なんでお前、俺の相棒やブルースカート教の内部の情報を知ってるんだ?」

シナモンに聞こえなかったのか部屋から行ってしまった。「さぁ来てくれ、ホワイトスカートに入ったんならこれを履いてくれ」

シナモンは白い、猫にはダブダブのスカートを渡してきた。「でけぇよ、もっと小さいサイズないの?」猫は文句を言った。「これ以下だとこれしかない」シナモンは履いたら猫の体がちぎれてしまいそうな小さな小さなスカートを出した。「マジか…」猫は諦めてウエストだけが合うダブダブのスカートを履いて、

どこかに向かうシナモンについて行った。

「どこ行くんだ?」猫は転けそうになりながらシナモンについていく。「今の反逆軍のメンバーに紹介しないといけないのでな、歓迎をするのさ。」シナモンは沢山ある扉を無視し一直線に歩く。「あのさ、この建物はなんなんだ?」シナモンは食い気味に答える。「ここは教団の支部教会の廃墟だ。一般人も教団も近づかない此処はかなりいい所だったんだ。」

猫は支部教会の廃墟なんてどうやって見つけたのか疑問だったが頭に留めた。

「よし、ここだ。」シナモンは沢山ある中扉の中で一番目立つデカい扉を開けた。「まだ来ないでくれ」シナモンが小声で言った。「みんなよく集まってくれた。今日は今まで一番いい知らせだ。なんとブルースカート教の元最高戦力の猫さんが来てくれた!さぁ入ってください。」猫はそんなに上げてくれるなら入って瞬間に歓声が上がるだろうとウッキウキで部屋に入った。

そこには、シナモンと1人の子供と見覚えのある男がいた。

「な、なぁ…これで全メンバーか?」猫は不安そうに聞いた。「心配するなコイツらの実力は一つの国を滅ぼせるくらいには強い!」

シナモンはカボチャ頭の子供を指さした。

「こいつは「パンプ」訳あってカボチャ大帝国から亡命してきた奴だ。こいつは子供だが

兵器作りに関してはブルースカート教に勝るほどだ。」次にシナモンは見覚えのある男を指さした。「コイツは「ジャック」ブルースカート教から逃げているときに脅…スカウトした男だ

コイツはえーと…そう!雑用だ!」ジャックはビクビクしてなんで自分がここにいるのかわかっていなさそうだ。多分脅されたんだろう。「これで全メンバーだ、今まではサポート面のメンバーだったが遂に戦闘ができる奴が入った。やっと俺たちの活動が始まるぞ!」シナモンはかなり自信をもっていた。

猫は怒りに任せて手伝うと言った事を後悔した。

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