第37話 また会う時の日まで

次の軍への通告があった2日後に、アルスさんやナタリアさんは次の配属先、王国北部の帝国との国境間際にあるエルクチェスター砦へと旅立った。


アルスさん達を見送った時には、ウィロスも第三王子の軍の編成されていた。というよりも、第四王子の兵士上がりの人は僕以外は全員他の軍や砦へと派遣されていったのだ。


もっと王都ではのんびりと出来ると思っていたが、最後はバタバタとした別れになってしまった。僕は有り金をほとんど使いアルスさんへお守りを一つ渡した。彼が前線で窮地の時に何か役に立てばと思い、僕が出来る唯一の事だった。


アルスさんからも別れの品に選別を貰った時には、つい寂しいからと口走りそうになったが何とかふみとどまった。


アルスさんやナタリアさんは僕の事を最後まで心配する素振りを見せていたが、僕は彼らの前ではもう弱音を吐かないと決めていた。


心配そうにする彼らに、僕は最大限の虚勢を張り見送ったのだ。


そして僕もアルスさんが旅立った3日後に王都を出ることになった。


第四王子の軍は魔道兵が7人。リーディアも7人との事のようだ。行く先々で増えて減ってを繰り返し、王国を旅をする。


ギレルさんを除く魔道兵6人と顔合わせをしたが、1人を除いて全員知らない人達だった。知っている顔の一人も名前は知らないウィザードの紋章をつけている人。残り5人も英才教育組のような身なりのいい、男女だった。


級も最高がウィザード3級が一人。残りは僕含め、メイジ1級と2級の集まりで第四王子の軍は人選から本当に期待はされていないのだと思わされた。


兵士や騎士は700人前後。騎士の従者や使用人などを合わせると900人ほどの人数になる。


第四王子の軍はアルスさん達とは反対方向の南へと旅立つ事に。王国や帝国との戦争には関係のない王国より南に位置した先住民と言われる異教徒が暴れているという事で、第四王子の軍は王都を出たのだ。


「ノエル君、これからよろしく頼むよ」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。デリックさん」


僕の新しいリーディアのデリックさん。40代ほどの見た目をしている片腕の男性。ウィザード2級の時に怪我をしたそうだ。


だが彼はもう二度と魔法を行使できない体となっても、リーディアとして生きる事を決めた逞しい精神の持ち主だ。リーディアとなる決意をしてからは、神聖のグリモワールの詠唱を更にそこから4つを覚えたそうだ。


もうこの軍に知り合いはギレルさんとハイマーさんしかいない。だがそんな人達は高見の存在、常日頃から日常会話を楽しめるような人達ではない。


僕は心から頼れる人はいなくなった。だが、次アルスさん達とあった時、見違えたと本当に心から言われるようにと僕はまた拳に力を入れた。


そしてメッセンジャーバックの中にある古代のグリモワール。これが僕の唯一の今の心のよりどころ。


僕は振り返り北部へと目を向けた、北部の空は暗くどんよりとしている。


彼らとまた会えますようと、北部へ向かった友人を思い、南へと行軍していったのだった。

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