マッチポンプ宇宙人
つねひろ
宇宙人、来る
巨大な浮遊船団が現れたのは4月1日であった。
特定の国の会計年度に合わせたわけではないだろう。たまたまであると思われる。現れた正確な時刻までは地球人にはわからなかった。地球水準の技術では察知すら出来ない方法で突然現れ、認識される前に世界中へ向けてメッセージを発した。
その内容は要約すれば『ワレワレハ ウチュウジンダ タダチニコウフクセヨ』である。地球人類がパニックに陥る姿は想像に易いものであった。
主要30カ国による緊急首脳会議がオンラインで行われた。『降伏するか否か』の議論は、早々に『誰が返答するのか』へ変わった。「我こそが地球代表国家である」と名乗り上げたい国が複数あるのだ。
約4時間に及ぶ議論の末にとりあえず出た結論は「地球代表団を組織してから返答するから時間をくれ、と返答する」という時間稼ぎの曖昧な物となった。
そして返答しようにもどこからどうすれば良いのかわからず、宇宙人からのメッセージも、どうやってインターネットやテレビ電波に乗せたのかも不明だった。
しかたなく各国から人員を寄せ集めた「連絡隊」という名目の集団を直接宇宙人のもとへ派遣する事としたが、それにあたっても「我が国の人員を」や「我が国の船や航空機で」など、主導権争いが起こった。
そこへ衛星が撮った宇宙船団の画像が届いた。共有された数枚の画像を見て、首脳達は黙り込んだ。それはどう見ても
「無理だ」
地球人の感覚からすると過剰な程に大砲らしき部位がつけられた、殺意をコレでもかと感じさせる巨大な戦艦が、海上に浮遊していた。機械と鉱物と生物を組み合わせたかのような、およそ想像していた宇宙船とはかけ離れていた。その夥しい数は、だいたい日本の北海道ほどの面積に見える。
首脳達は皆、口にはしなかったが(とても話し合いが通じる相手には思えない)と感じた。
そこから会議の流れは一変し、連絡隊編成の主導権を押し付け合い始め、首相の安請け合いにより日本が受け持つこととなった。
各国から様々な分野の学者や役人を受け入れつつ、「あくまでもただの連絡係であり地球を代表した組織ではなく今後の権限についても一切保有しないが負担は主に日本が負う部隊」の安請け合い情報はすぐに日本国民も知るところとなり、大炎上の後に首相は辞任する事になるが、それは別の話。
「では、至急各国組織編成と宇宙人へ向けたメッセージの作成に移りましょう」
オンライン首脳会議が一段落し、次のステップへ向かい始めたところで日本の首相はマイクをオフにして側に居た防衛大臣へ聞いた。
「しかし派遣するにしても、これはどこの海上だ?」
「南太平洋、約南緯48度西経123度。到達困難極の1つ。いわゆるポイント・ネモです」
「…………なんだそれは?」
この時点で、宇宙人がメッセージを発してから6時間半が経過していた。
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