第51話 オリバの子分


「おいクソガキ、なんでおまえがこんな所にいるんだよ? てか、オリバさんはどこだ?」


 バースは街でオリバを支持する数少ない人間のうち一人だ。


 というのも、オリバの下にいれば自分も大きな顔をできるからというような理由なんだろうけど。


 そんな感じで、オリバの舎弟をしている冒険者も多少は存在するのだ。


 そういえば、バースにもよく馬鹿にされたし、手も出されたことがあった。


 オリバに気に入られようとしているのかは分からないが、オリバの行動を全肯定するような奴だ。


「なんだこのオリバの二番煎じみたいな人間は」


 バースを見上げながら、ケルは目をぱちくりとさせてそんなことを口にした。


うん、サラさんも一瞬頷きかけたくらいだし、中々確信を突いた一言だと思う。


「ん? 今、こいつ喋ったか?」


 しかし、バースはケルが話すわけがないと思ったのか、ただ首を傾げているだけだった。


 どうやら、上手いこと聞き間違いだと思ってくれたらしい。


 それなら、さっきのケルの発言はなかったことにして、このまま話を続けよう。


「『オリバさんはどこだ』って、知らないんですか?」


「あん? 知らないから聞いてんだろ。なんだ、体調でも悪いのか?」


 なんとか意識を俺の方に戻せたみたいなので、俺はほっと胸をなでおろす。


 オリバの子分ということもあって、バースも怒りだすと面倒なのだ。


 それにしても、オリバの子分のクセにオリバがどうなっているのか知らないなんてことあるのだろうか?


 いや、あれだけのことをしでかしているんだから、オリバの子分じゃなくても冒険者なら知っているはずだ。


 それでも、知らないということは何かあるのだろうか?


「……もしかして、バースさんってしばらく街に帰ってませんか?」


「ああ。今は馬車の護衛の依頼中だからな。俺は街行きの馬車担当じゃないから、しばらく帰ってねーけど」


 バースはそう言うと、首を傾げたままじっと俺を見ていた。


 街に戻らなくても、少し乗客の話に耳を傾ければオリバの現状なんて分かりそうなものだけど……。


 そういえば、オリバたちって話している声もいつもでかくて、周りの声や視線を気にしないような奴らだった。


 そうなると、同類であるバースも同じような感じなのだろう。


「ん? あ、もしかして、おまえ見切られたんだろ! おまえ弱すぎるし、いる方が邪魔だって、オリバさん言ってたもんな!」


「まぁ、追放はされましたかね。それより、馬車に乗ってもいいですか?」


 こんなところで無駄口を叩いて馬車に乗り遅れたら馬鹿みたいだ。


 俺は話が長引かないように、適当に話を切り上げることにした。


 別に、バースにオリバのことを教えてあげる義務もないし、訂正するのもめんどうだしね。


「おう、乗れ乗れ! 俺たちC級冒険者がちゃんとおまえら雑魚共を守ってやるからな」


 バースは一瞬むっとした後、俺の肩を強く叩いた。


「……ちゃんと従えよ? 俺たちのルールにな」


 そして、バースは最後に不敵な笑みと共にそう言ったのだった。

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