第48話 ひと段落
「お疲れさまだね、ソータ」
「はい。色々とありがとうございました」
オリバたちとの勝負に勝って、オリバたちが憲兵に連れていかれるのを見てから、俺とサラさんとケルは食事処に来ていた。
しばらくはダンジョン内で食べる食事だったので、ちゃんとした椅子に座ってゆっくりと食事をするのは久しぶりだった。
「今日は思わず奮発しちゃいましたよ」
俺が目の前に置かれたステーキを前にして喉を鳴らすと、サラさんはくすっと笑う。
ステーキとサラダにスープにパンが付くセット。
こんな豪華な食事はオリバのパーティにいたときには食べる機会がなかった。
オリバたちはもっと質の良い肉と酒を飲んでいたけど、俺がもらえるお金では良くても日替わりの一番安い定食がやっとだった。
……まさか、C級ダンジョンの依頼達成額があんなに貰えるなんて思わなかった。
一体、オリバたちはどれだけ俺の分を自分たちの懐に入れていたのか。
いや、今はそんなことよりも目の前のお肉だ。
俺は運ばれてきたばかりのお肉を切って、それをさっそく口の中に放る。
肉肉しい歯ごたえのお肉を噛むと、すぐにジュワッという肉汁が溢れてきた。
「うまっ……これは、満足感が凄いですねっ」
「ふむ。人間たちの食事は美味いな」
ちらっとケルを見ると、ケルは俺のすぐそばで床に置かれた俺と同じメニューに舌鼓を打っていた。
ケル曰く、人間と同じものを食べても何も問題ないらしい。
むしろ、人間が食べられないような毒も食べられるとか。
さすが地獄出身というだけはある。
「そんなに美味しそうな顔をすれば、店主も喜ぶだろね」
サラさんはそう言いながら、小さく切り分けたお肉を口に運ぶ。
サラさんも人のことを言えないのでは? と思うくらい、口元を緩めて美味しそうに食べている。
そんなことを考えて、少しだけ笑っていると、サラさんが何かを思い出したように俺を見る。
「そうだ、どうしようか。もう明日からもう依頼を受けるかい?」
サラさんはそう言うと、小さく首を傾げる。
今日、正式に俺とサラさんとのパーティは新しいパーティとして受理された。
それも、今回のダンジョン依頼をスムーズにこなしたことが評価されたらしく、いきなりC級パーティとして活動を開始できることになったのだ。
オリバのパーティを追放されたときはどうなるかとも思ったけど、これは幸先の良いスタートを切れたと言えるだろう。
「あの、できれば数日は依頼ではなく、別のことをしたいんですけど」
「別のこと?」
「はい。せっかく魔導書を手に入れたので色々と試してみたくて」
まだまだ読み込めてもいないけど、魔導書を見ながら実際に魔法も試してみたい。
俺がそう言うと、サラさんは小さく頷いてくれた。
魔導書を読みながら古代魔法を試せる。
そんな明日以降の数日間を思い浮かべて、俺は口元を緩めずにはいられなかった。
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