第47話 オリバたちの罰
「ギルドマスター。今までのこと、全て正直に話します」
オリバが自分の負けを認めると、ナナが一歩前に出てそう言った。
オリバたちとの勝負は俺たちの勝利で幕を閉じたのだが、まだ大事なことが残っていた。
それは、オリバたちの処遇についてである。
そして、そのためにはこれまでのことを正直に話してもらう必要がある。
「ほう、それはどういう心変わりだ?」
ハンスさんは疑うように眉間に皺を寄せて、ナナを軽く睨む。
刑の減軽を求めていたはずの人間の言葉には思えなかったのだろう。
ナナは俺を見て言葉を続ける。
「あの子がいなければ、私たちは帰ってくることもできませんでした。助けてもらった時に、全部素直に話すことを約束したので」
「オリバたちを助けたのか?」
ハンスさんはきょとんとした目で俺を見る。
二度も殺されかけたのに、こいつらを助けたのか? そう言っているような目をしていた。
すると、カウンターの上でテシテシッと後ろ足で頭を掻いていたケルがこちらに振り向く。
「帰り道にいたのからソータが拾ってきたのだ。なぁ、ソータよ」
何か不要な物を拾ってきたみたいな言い方だなと思いながら、俺はクスッと笑う。
「うん。あながち間違いではないかもね」
上手く表現したなと思うと、笑いを堪えることができなかった。
「そういうことなら、奥で話を聞こうか。オリバたちにも来てもらうぞ。拒否権はないからな」
ハンスさんは合点がいったのか、小さくため息を漏らしてから冒険ギルドの奥にある個室を指さす。
すると、その声を待っていたというようなタイミングで、冒険ギルドの奥からぞろぞろと憲兵たちが現れた。
「は? け、憲兵だと?」
突然の事態に驚いたのか、オリバは声を裏返していた。
まさか、もう準備が整っていたとは思わず、俺はほぅっと感嘆の声を漏らす。
「当たり前だろ。なんで驚いてるんだ?」
ハンスさんは呆れるように目を細めて、オリバたちを見下すように見た。
「言ったはずだ。『とてもじゃないが、ギルドで捌ける罪の重さじゃない』ってな。初めから、勝負の勝ち負けでおまえたちの罪が軽くなることはなかったってことだ」
「おまっ、初めからそのつもりだったのかよ!!」
「そうに決まっているだろ。まさか、さらに罪を重ねてくるとは思わなかったがな」
ハンスさんと話している最中にすでに憲兵に囲まれたオリバたちは、なす術なく両腕を拘束された。
「クソッ……クソがぁぁ!!」
オリバは最後にそんな叫びと共に俺を睨んでいたが、憲兵の力に逆らうことができず、引きずられるようにして、冒険ギルドの個室に連れていかれたのだった。
「あの、エリさん。ちなみにオリバたちってどのくらいの刑になるんですか?」
「憲兵さん曰く、保険金詐欺に書類の偽装に殺人未遂……良くて、鉱山送りじゃないかって言ってました」
エリさんはそう言ってから、顔を近づけて小声で続ける。
「オリバさんなんて殺人未遂二回ですからね。もしかしたら、生涯あの顔を見ることはないかもしれませんよ」
多分、罪に加担した割合によって務める年数が違うとは思うけど、エリさんの言葉通りなら、オリバは生涯炭鉱での労働を強いられることになるのかもしれない。
もしくは、寿命より先に過酷な地で生き抜くことができずに、死んでしまうかのどちらかだろう。
「ふむ、たまには絶望をした顔を見に行くのもいいかもしれぬな」
ケルはそう言うと、マイペースにカウンターの上で毛づくろいをしていた。
どこかケルの顔がすっきりしているようにも見えたが、多分それは俺も同じかもしれない。
そんなことを考えて、俺はケルの頭を優しく撫でるのだった。
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