第40話 避難をしたオリバたち
一方オリバたちパーティ。
オリバたちはソータと分かれてから、少しずつではあるがダンジョンの中層まで潜っていた。
しかし、中層で魔物の群れに襲われてしまったオリバたちは、逃げるように上層まで避難することになった。
そして、現在。
魔物との戦いから逃げてきて、その場に座り込んでいたリリスは息を整えてからオリバを睨んでいた。
「ほんっとうに最悪……あんた支援魔法がないとまともに魔物斬れないわけ?」
先程までの魔物たちとの戦いの中で、オリバは途中から魔物を斬る体力がなくなったのか、最後の方は剣を鈍器のようにして戦っていた。
当然、そんな力任せの前衛では魔物を捉えきれず、後衛のリリスのもとにも魔物が押し寄せることになったのだ。
「最悪なのはこっちのセリフだ!! 何体も斬れば疲れるんだよ、俺以外の奴がまともに動かないから、疲労が溜まって魔物を斬れなくなっただけだろ!!」
オリバは顔を真っ赤にさせながら立ち上がって、癇癪を起しながら言葉を続ける。
「ロードは盾役のくせに疲れるのが早すぎるし、リリスは魔術師のくせに、ふざけたようなザコ魔法しか使わない……ナナなんて、僧侶のくせに早々に魔力切れだと? おまえら、ふざけてんのか!!」
オリバは髪をバリバリッと掻きながら怒鳴る。
言い過ぎに思えるオリバの言い分だが、まったく見当違いのことを言っているという訳でもなかった。
いつもなら連戦続きでも疲れる素振りも見せない盾役のロードは、ソータの支援魔法がないせいか魔物の群れの攻撃に押されてすぐに息切れしていた。
さらに、いつもはすぐに高火力の魔物を打っていたはずの魔術師のリリスは、前衛が時間を稼いでも、威力の大きくない魔法をちまちまとしか打てなくなっていた。
そして、いつもはパーティメンバーの怪我を瞬時に治していた僧侶のナナは、開始早々魔力切れで魔物から逃げることしかしていなかった。
各々が今までの自分との大きな違いを認めたくなくて、オリバの言葉に全員が誤魔化すように目を逸らす。
「うるさい、いちいち騒がないでよ。魔物が来たらどうすんのよ」
「もう疲れましたよ。……怒鳴らないでください」
「今魔物に襲撃されたらマズいことぐらいは分かるだろ? 頼むから少し静かにしてくれ」
リリス、ナナ、ロードは順々にどこか冷たい声色でそう言った。
そして、三人は目を合わせないまま順々に言葉を続ける。
「あいつがいれば今頃宿で休めてるのに、数日ダンジョンの地べたで寝ることになるなんて最悪なんだけど」
「あの子の才能を誰かさんが見逃さなければ、こんなことにはならなかったんですけどね」
「オリバがソータを追い出すなんて言わなければ、こんなことにはなっていないんだがな」
三人は分かりやすくため息を吐いて、オリバを軽く睨む。
三人はオリバを標的にすることで、自分たちのせいではないと思い込みたかったのだ。
四人で悪知恵を働かせてソータをハメたはずなのに、主犯であるオリバに全ての罪を着せようしている。
そんな汚くて分かりやすい考えだった。
「お、おまえらなっ……」
オリバは怒りのあまり肩をプルプルと震わせながら、大きく舌打ちをして他のメンバーから背を向けた。
そして、荒々しく地面に座ると、怒り狂ったように頭をガジガジっと掻く。
そんなオリバの姿を見て、三人は呆れながら大きなため息を吐く。
「え、あれって……」
疲れ果てているナナだったが、こちらに向かってくる小さな影を見て思わず立ち上がった。
ナナの声に釣られて、オリバたちはその影の方を見る。
オリバたちの視線の先にいたのは、とててっとオリバたちの前に現れたケルだった。
ケルはオリバたちを見ると、ニパッとした笑みを浮かべる。
「ソータ、いたぞ。愚かな人間たちだ!」
そして、目をキラキラとさせてケルが振り向いた先には、呆れるような顔をしたソータたちの姿があった。
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