第19話 シュバルツ家のモットー
「それでは、今のうちに仕事の概要を伝えておきたいのだが、構わぬか?」
「はい、お願い致します!」
リナは今までに見たことの無いほど晴れやかな笑顔だ。
「私は席を外した方がよろしいでしょうか?」
「恐らく現状ではリナが理解できないこともあるだろうし、お前も聞いておけ。お前は情報を外部に漏らすような奴でも無いしな。」
オスカル殿下は人が渡した書面を捨てて無かったことにしようとする情報リテラシーガバガバな方ですけどね…とは言わないでおく。
「わかりました。」
「では、長くなりそうですのでお紅茶をお持ちしますね!」
そう言うとリナはウキウキで紅茶セットを取りに来賓室を出ていった。
「嬉しそうですね、リナは」
「あ、あぁ…」
「何かご不満なことでも?」
「そういう訳では無いが…私は頼りにならないのだろうか…」
「確かに私がリナの立場だとしたら、殿下に何か任せるより自分がやった方が早いと思って行動するでしょうが、」
「う…」
「リナの場合はそうではないと思いますよ。純粋に殿下のお役に立てるのが嬉しいのだと思います。」
「役に立つのが嬉しい…?」
オスカル殿下はキョトンとした顔をしている。
「何かおかしなことでも?」
「いや、今まで私に何かして欲しいという令嬢はいても、役に立ちたいと言ってくる令嬢はいなかったからな…お前のように微塵も興味がなさそうな奴はいたが。」
なぜ私だけ頑なに "奴" 呼ばわりなのか。…別にいいけど。
「確かにこの国の女性は良くも悪くも受け身ですからね…」
「リナは…お前もそうだが、他の女性とは何が違うのだろうか?」
「それはやはり、シュバルツ家の人間だからでしょう。うちのモットーは"常に向上心を持ち、自らの手で己が道を切り開け"ですから。」
「…なるほどな。」
「お紅茶お持ちしました!」
そこへ意気揚々と紅茶セットを持ったリナが帰ってきた。
「ああ、では仕事内容の説明に入ろうか。」
――――
その後、リナとついでに私はオスカル殿下から色々と説明を受けた。説明し終わるとそのままオスカル殿下は帰っていった。
「殿下に了承得られて良かったね、リナ」
「はい!…あの、これから頑張るので、もし分からないことがあればお姉様に質問してもいいでしょうか?」
「もちろん!お父様やルーカスお兄様にも協力するように言っておくよ。」
「ありがとうございます!」
そう言って屈託のない笑顔で笑うリナをよそに、"これでオスカル殿下につきまとわれずに済むな" などと打算的なことを考えている私であった。
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