第3話 朝食
舞踏会の翌日、私は屋敷のダイニングへ行き朝食を取ろうとしていた。我が家は基本お父様は忙しいので、子供達とお母様だけで食事を取る。裏を返せば、朝食に行けばリナやお母様に会うことになる。まあぶっちゃけ私はそれでもいいんだけど、いつものようなにこやかな食卓とはいかなそうだ。
「シェリー」
ダイニングに着くと、早速お母様に呼び止められた。お母様が一番乗りで、まだダイニングには私とお母様しかいないみたいだ。
「こちらへ来なさい、シェルシェーレ」
「はい、お母様」
お母様の元へ寄ると、私の手を握りしめてきた。顔をよく見ると少しクマがあるように見える。なにかあったんだろうか。
「シェリー、昨日のことお父様から聞きました。1人で抱え込むことはありませんよ。何か悩んでいることがあれば、いつでも相談してくださいね」
お母様は今にも泣きそうだ。
しまった。喜びのあまりお母様に事情を話すのを忘れていた。というか、それを言うならお父様にもこれが私の望んだ展開であることを説明し忘れていた。いや、リナとオスカル殿下を意図的にくっつけたくだりから話すのはまずい気がするけど、"結果オーライですわ!"くらいは言えたはず。
私は目をうるうるさせているお母様にひどく罪悪感を覚えながら返答する。
「ありがとうございます、お母様。ですが、私これでも落ち込んでいませんのよ?魔法の研究は前からしてみたいと思っていましたもの。」
「私の可愛いシェリー…あなたは本当にいい子ですね…いいですか?お母様はいつでもあなたの味方ですからね」
「はい、ありがとうございます」
私は至って素直な気持ちを伝えたつもりなのに、お母様は私が気を使って大丈夫な振りをしていると思ったらしい。誤解を解くのは…まあとりあえずいいか。これ以上彼女が思い悩むようならまた考えよう。
「あ、母さんとシェリーおはよう」
そこへやって来たのは私の兄でシュバルツ侯爵家次男のルーカスだ。ちょうどいいタイミングできた。
「おはよう」
「おはようございますお兄様」
「シェリー聞いたぞ!皇子にフラれたんだって?しかもその皇子はリナと…」
「やめなさいルーカス!!」
お母様が大声を出し制止した。あまりの気迫にルーカスお兄様も私も驚いて一瞬停止してしまった。
「いえ大丈夫ですよ、本当のことですから」
「でも…」
「ごめんごめん、悪かったって!まああれだな、これからいい事あるって、どんまい!」
お兄様は空気はあまり読めないけど、多分私が婚約にさほど乗り気で無かったことを知った上での発言なので、悪気はない。ただ今は私よりもお母様の方がピリピリしているからやめて欲しい。
「ところでリナは来ないのかしら?」
「いや~昨日の今日で来られないだろさすがに。もう俺らだけで食べちまおうぜ」
「そうですわね」
ちなみに兄弟はこの他に長男のニコラスがいるけど、彼は別邸で新婚ホヤホヤの奥さんと暮らしているので基本こちらには顔を出さない。
にしても、リナが来ないのか…後で様子を見に行こうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます